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私なりに書き方の進め18:拙速 オア 冗長

小説には拙速であるという欠点もあれば、冗長であるという欠点もある。冗長をかなり嫌う自分は、気をつけないとカタツムリが進むようにちまちまと進む物語をどうにかして速く進められないかと思いながら書いていました。

なぜかといえば、全部書くのがめんどくさかったからです!

AはBに泣かされる。Aは外へ出る。雨が降っている。傘を持ってない。ちょっと傘をとりに家へ戻るか迷う。しかし、Bと顔を合わせたくなかったのでそのまま雨の中を走る。走ってCの家へと向かう途中でお豆腐屋さんとお肉屋さんと金物屋さんに会った。「どうしたのAちゃん」と心配されるが、適当に誤魔化してなんとかCの家に辿り着く。ところでCは二股かけているもう1人の彼氏でした!

えっと何の話だったっけ?

小説を書き始めの時は、上のように書いてしまうことが多いような気がするが、お豆腐屋さんとお肉屋さんと金物屋さんにあったくだりは別にいらないのですよ。だから、カットしちゃっていいのよね。映画を撮っている気分でAが外へと出ていくシーンから、Cの家へと現れるところへと繋げばいいのです。

そんなん当たり前じゃんって話なんですが、この、映画を作るようにカットを絞っていくというか場面を絞っていくセンスってきっといい小説を書くために必要な能力だと思います。

物語の設定は、書かない部分まできちんと立てるべきだと思います。時系列でどんなことが起こっていくのかは設定すべきです。ところが、その起こることを全部時系列に沿ってべったり書く必要はない。

場面の切り替えをする際に、自分の場合は、一人称の視点を変えて書くという方法をよく使っています。上の例を使用すれば、

家を飛び出ていくところまではAちゃんの視点で語り、家にAちゃんが飛び込んでくるところからはC君の視点で書くというようにです。

この時、C君はAちゃんがB君の家から来たことも、途中で豆腐屋と肉屋と金物屋にあったことも知らない。ま、この場合豆腐屋と肉屋と金物屋は別に物語の主筋と関係ないので純粋にカットし、しかし、C君はB君の存在を知らないわけですよ。でもAちゃんと読者は知っている。

騙されてるぞ!C君!

と思いながら読むシーンとして書いていく部分ですね。これも一つの方法です。ただ、常にこれをしてしまうのもまたワンパターンなので、ずっと一つの視点を動かさない方法と使い分けるといいかもしれません。

場面と場面の間の不要な場面をカットするという方法よりもっと長い時間の出来事を短縮して書くこともある。物語の主軸に沿って話が続いてゆくときに、新しい登場人物が出てきてその人の来歴を紹介する時とかです。あるいは物語の中で冒険者が新しい国に辿り着いてその国のやはり過去から今までを紹介するときも、短く分かりやすくまとめる必要が出てきます。

ちょっと脇道にそれますが、最近の漫画とかだと例えば、主軸に沿っていたのに突然脇役キャラの過去の回想シーンとかが入り込んでくることがあるじゃないですか。子供の頃の思い出。なぜこのキャラがあんなに頑なにあんこを食うのを嫌がったのか。それは子供の頃に毎日売れ残りのおはぎを食わされていた和菓子屋の倅だったからだ!ジャジャン!みたいな。

あ、こいつ、死ぬな、と思う展開である。こいつが死ぬから死ぬ前によりこの脇役に感情移入するように突然あんこ嫌いの過去を挿入してきたか!と思う。

「母ちゃんの、あんこ、食いたい」
「死ぬなー、マギー(→とっさにつけたどうでもいい名前)!」

しかしだな、この無理やり回想シーン、私的にはかなりいたいと思う。それよりも必要最小限で最大効果をあげられる短い来歴の差し込みかたを取得するべきである。あ、こいつ死ぬな、とバレバレな取ってつけたような回想シーンなんぞ、ボツである、ボツ。

次から次へとじゃんじゃん登場人物が出てきては殺される少年漫画の悩ましい点についてはどっかへ置いといて、短い来歴の差し込みかた、語り口の上手いなぁと思う作家さんとしては、宮部みゆきさんだと思う。宮部みゆきさんは語り口のバリエーションの多い作家さんであるし、また、ストーリーテラーである。複数の技術のバランスがいいとも思うが、その中でも特に構成の上手な人だなと思う。

宮部みゆきさんの長編も短編も読んでいるが、特に連作物ではない短編を読むと短いページ数の中で一気に登場人物の人となりや来歴が効果的に語られ、それからまた一気に一つの結論へと流れ込んでゆくのが読める。

短編小説と一口にいっても色々な書き方があるのだろうと思うが、一つの点からこれを語ると、短い頁数の中でその場面の雰囲気や人物の人となりを書きこまないとならないので、結構難しいんじゃないですかね。短く端的にこの短編で感じさせなきゃいけない結論への伏線となるような導入を書かなきゃいけないからね。

ま、しかし、そんなストーリーテラーがどうのとかいうような高みへ行くような前にできることもある。

「豆腐屋と肉屋と金物屋の親父は愛すべき脇役ではあるが、別に書かなくてもいいな!」

まずは物語のプロットを時系列に立てた後で、書くべき部分と書かないでもいい部分を分けて、カットするところから始めよう。

汪海妹
2024.07.29

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