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保護猫、ミミとモモ。

24歳で結婚をして、半年ぐらいがたったころ、母が電話口でこういった。
「ねえ、猫ちゃん、飼わない?」
その第一声を聴いたとき、電話の向こうでおそらく今、頬をゆるめながら、あの人懐っこい愛嬌のある顔で、いきいきと電話をしてきているであろう母の姿が目に浮かんだ。
「え、おかあさんどうしたの?急に」
「うん、実はね…」と、話を聴いてみると、いかにも母らしい成り行きであった。
まず私の母は、大の動物好きだ。
どのぐらい好きかというエピソードをひとつ。
母ゆかりは、小さいころから犬猫が大好きで、特に犬を愛してやまない少女であった。
しかし、小学1年生のころに運悪く、隣家の犬、ピスに腕や胴、ももなど全身を縫うほど嚙みつかれてしまい、大けがをしたのだ。
どうやらピスは、長いこと飼主に散歩に連れて行ってもらえず、ストレスがたまりにたまり、ついにその囲いの金網を破って、通りに飛び出したところに、肉のおつかいを頼まれた母が運悪く出くわしてしまったのだ。
母はピスと目があった瞬間、思ったのだそうだ。
(ピス、だめよ)と。
しかし、残念ながらその思いも虚しく、つぎの一瞬、あえなく母はピスにその身を思いきり嚙まれてしまったのだ。
毎日、家の二階からピスにこっそりおやつをあげて、可愛がっていたにも関わらず・・。「ピス、お散歩に行けずにかわいそう」と幼心に胸を痛めていたにも関わらず・・。
その後、ピスは保健所へ行くことになったのだが、母は、「ピスはなにも悪くない」といって保健所に連れていかれるピスを泣きながら必死に止めたというぐらい、犬が大好きなのだ。
私ならそれ以来、一生犬が怖くて近づけなくなりそうだ。

そんな母は、毎年年末に縁あって、近所にある氏神神社の新年のお札配りのお手伝いをしているのだが、そのお札配りの先で出会った民家に、生まれたばかりの子猫が保護されており、里親をさがしているという話を聞きつけたのだ。これはなんとしても飼主を見つけてあげたいと、さぞかし燃え盛る炎のような熱い使命感をその胸に宿したと思われる。
そして手始めに冒頭の電話が私のもとにかかってきたのである。
かく言う私も、やはり親の影響か、犬猫は好きなのでまずは夫に相談。
夫もまた、実家で保護猫を飼っていることもあり、なんら苦も無く難もなく、あっさり了承すーいすい。
こうしてあれよあれよという間に、保護猫、ミミとモモに会いにいく日にちが決まったのであるー。

長くなったので、つづきはまた次の話で。
お読みいただき、ありがとうございます。


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