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愛そうとしたのよ ずっと ずっと ずっと


先日、時実新子さんの読書感想文の記事をあげたら
(恋ごころが女の人生を変える)

また、新子さんの本が読みたくなり
先程、図書館で借りて
今、近くの川辺で風に吹かれながら、読んだ

本の名前は

『白い花 散った』



「愛そうとしたのよ ずっと ずっと ずっと」

難しい言葉など 何ひとつ 使われていないのに
胸に押し迫るものがある句である

新子は 10代で結婚している

この句は 夫のことだろう

愛するひと
それは 言うまでもなく 
愛そうと努力して 心を奮い立たせて シャカリキに愛するような
相手ではない


この句を読んで
昔、自分が書いていたメルマガの読者であった Sちゃんを
思い出した

Sちゃんは 京都の人妻だった
子供のことは とても愛しているけれど 旦那さんのことは
愛していなかった

毎日、少しずつ 旦那さんの食事に出すおかずにだけ
塩分を こっそり多めにしている
と、打ち明けてくるほど
その想いには 深刻なものが感じられた


旦那さんに夜、sexを求められるのが
イヤでイヤでたまらない
と言う

Sちゃんは ボクの書くものを
とても気に入って読んでくれて よくマガジンに返信をしてきてくれた


ある時、ボクは 「恥の概念」
そんな タイトルで 雑文を書いた


自分にとっての「恥」

それは 例えば、駅の公衆トイレで
鏡の前にずっと立って 化粧を丹念にしている女

その女は 見た目は美人なのだが
化粧とヘアセットを終え、洗面台に自分の髪の毛が落ちまくっているのに
知らんぷり

自分のお顔だけ 綺麗に塗りたくって
それでおしまい

こういうのが ボクの思う「恥」

そうだな

あとは、たった一度の人生なのに
自分の気持ちに嘘をついて 
愛してもいない男と暮らし続ける
それを、何か 誰かのせいにしている

こういうのも ボクにとっては「恥」


すると
Sちゃんから 直ぐに 返信がきた

「サラさん(ボクの当時のハンネ)にとって
わたしは 恥 だよね?」


ボクは答えた

「恥」ではなく 「苦」なのでは?


次に Sちゃんからきた 返信は
号泣している 顔文字だった



ボクは Sちゃんに なでなで
と 返事した


Sちゃんは 当時 流行っていたのか
よく分からないけれど
前略プロフ、という自己紹介を書くツールで

尊敬する人物は?

という 問いに
サラさん 女だけど 尊敬してるし 大好き

と、
書いてくれていた


ボクのような ただの しょうもない主婦には
もったいないようなお言葉である


その後、
直ぐに Sちゃんが 旦那さんと離婚することは無く
何年か経って
メルマガ自体のサービスが 終了してしまい
現在のSちゃんの状況は 分からない


愛そうとしたのよ ずっと ずっと ずっと


Sちゃんは おそらく
そういう気持ちさえ もう 失っていた

きっと 子供のことだけを
糧にして 夫婦生活を 凌いでいたのではないか


ボクには 自分以外の他の誰かの人生に口を挟む権利はないし
ああせよ こうせよ

などと、言わない


自分は 自分の生き様を 
思うがままに 書いているだけだ


すっかり 日が沈みかけてきた

そろそろこの辺で
書き終えなくてはならない


おてんとさまが でっかくてまあるい


いつか また
この川辺のベンチで 夕陽を見るとき

Sちゃんのことをきっと
思い出す


***


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