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Photo by
39ra52manabi
【詩】蒼穹の白鯨
アスファルト焦げる住宅街で 奇妙な声を聴いた
それは高い音だが、不快感はなく
どこか涼しい風を運んでくれた
僕は少し辺りを見渡してから歩こうとするけど、
また足を止めてしまった
波の音がする
地球の揺り篭にゆられた水の音がする
それは空から響いた
ぽつ ぽつ ぽつ という雨音が
僕の目線をうえへと誘う
不思議な声と波の音が
だんだん大きくなる
そして僕の瞳に映ったのは―――
蒼い海を泳ぐ白鯨だった
鯨の起こした水飛沫が、空から僕らへと落ちていく
蝉の鳴く夏に晴れた雨が降る
宝石のように輝く雨粒が
アスファルトに溶けて 消えていく
夏こそが水の一番美しい季節
僕はそう思った