【コラム】"愛玩" で飼えなくなった特定動物⑥ヤマカガシ(ニホンヤマカガシ)
日本産のヤマカガシRhabdophis tigrinusは、色々な点において興味深いヘビの1つと言えるでしょう。
その代表的なものは彼らが大まかに2種類の毒をもつ、という点です。口の奥にある長い牙で利用される毒は、血液の凝固を促進させる成分を主としたもの。一方、頸部から発せられる毒はヒキガエル由来のものでステロイド系の毒素とされます。
後者については餌動物であるヒキガエルから摂取されるため、東北地方のとあるヒキガエルのいない島嶼に棲むヤマカガシは持っていない(分泌できない)とする研究論文を見たように記憶しています。
ヤマカガシが興味深いもう1つは、分布域による体色差が大きいことが挙げられます。
東京西部や九州などでは赤みの強い個体群が知られているほか、千葉県・房総半島の一部では青(blue)の発色が確認されている個体群もいます。
このような "劇的な体色の差" がどのようなことに由来するものなのか、はっきりとした研究発表がありません。遺伝子レベルでの分類の違いも確認されていないようなので、同じヤマカガシであることは間違いないと思いますが。。。
ヤマカガシは性格も大人しく、”普通の飼育” をしている限りは咬まれるような事故はまず考えられませんので、ペットとしてはとても良いヘビだと思います。
特定動物に指定されてしまい、愛玩目的での飼育ができないのはとても残念でなりません。
運動量は比較的多い方、また水がとても好きなので広いウォータープールが必要なことからもケージは広めの方が良いでしょう。
またほかのナミヘビ類と同じく地中に潜る傾向がありますので、床材は土やチモシー、枯葉などが適しています。
餌はヒキガエルを中心に何でもよく食べますので、拒食で困るような状況はまず考えられないと思います。
ヒキガエルは広く大型コブラに対しても利用価値の高い餌動物ですので、これらを飼育する場合には併用できると思います。
温湿度管理についても特にほかのヘビと異なる特徴的な点はなく、常時摂氏22,3℃~30℃くらいの温度帯をキープできていれば問題となることはありません。
体色、そのパターンが美しく、餌も何でもよく食べる。しかも、気性が穏やかで事故などの心配もない。
ペットのヘビとしては言うことないだけに、"人にとって危険な動物である" といういわれのない汚名を着せられてしまっていることが非常に残念なヘビの1つだと言えます。