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床材の考え方

ヘビの健全な飼育において、ケージと同様に重要なものの1つが "床材" です。床材、これはすなわちケージの底に敷く素材のことです。

いうまでもなく地面を這って移動する動物であるヘビにとって、生涯においてもっとも頻繁に、そして長い時間身体を接触させるのがこの床材ですから重要でないわけはありません。
しかし、現在のヘビの飼育ではこの床材がかなり軽い扱いとされているようです。これはとても残念なことです。


"ヘビに適した床材" を考えるとき、彼らの行動だけでなく体型の進化についても考える必要があります。
多くの人はご存知かもしれませんが、ヘビはトカゲから進化したとされています。つまり、"脚がある" という構造から "脚がない" という構造へと進化したというわけです。

この進化には、ヘビの "地中に潜ることを好む" という性質が関係していると考えられます。トカゲの仲間でも "サンドフィッシュ" などという通称がついたScincus属など、土や砂に潜ることを好む種においては 脚が極端に小さい(短く、かつ細い)ものが多いようです。これは物理的に "潜りやすい" 姿を取得しているのでしょう。


同じように、ヘビの円筒形(シリンダー状)の体型も地中に潜ることに傾倒したものだと考えられます。事実、ナミヘビ科の多くの種をはじめ、ほとんどのヘビが地中に潜ることを好みます。

こうした特徴を考えると、床材には必ずヘビが潜ることのできる柔らかい素材を使用する必要があります。ただし柔らかければなんでもいいかというと、もちろんそんなことはありません。
土はただヘビが潜るためだけのものではなく、排泄物の処理をしてくれる微細生物が繁殖しやすい環境、あるいは適度な湿気を保ってヘビが地中で動きやすく、快適に過ごせる環境でなければなりません。

では、どのような "土" がヘビの床材として適しているのでしょうか。単体で使用できるものはあまり多くありませんが、園芸用の土の中でも、いわゆる "培養土" と呼ばれる複数の素材をブレンドしたものの中には、1つの製品だけでヘビの床材に必要な性質を備えたものもあります。
ご要望があればそちらをご紹介することもできますが、まずは床材としての "土" に必要な性質を以下に羅列してみることと致しましょう。

1.柔らかい:ヘビが穴を掘るのに支障がない
2.適度な保水性と通気性:ケージ内だけではなく地中の湿度も重要な要素です。ただし、水捌けの悪い地中はヘビがとても嫌がります
3.酸性傾向に寄り過ぎない:糞などの有機物を分解してくれる土壌動物の活動や繁殖に影響します。また一部の用土では発酵熱を発しますが、それにより地中温度が安定しない、あるいは高くなりすぎるリスクがあります。
4.土を構成する粒の単体が硬過ぎない:誤飲の際に糞が詰まったり、ひどい時には脱腸などの健康異常を招く危険性があります
5.ケミカルな原材料(リン酸アンモニウムや窒素系肥料など)を使用していない。誤飲によるヘビの健康へのリスクがあります。微細生物への影響も少なくありません。

これらを考えた際に使用できる素材としてはパーライト、ピートモス("ph調整済み" と表示のあるもの)、ボラ土、発酵処理済みバーク、川砂(粗目)、カキ殻などがブレンド素材として利用できます。

一方で使用しない方がよいだろうと考えられる素材には黒土、赤土(赤玉土)、鹿沼土、バークチップ、ph未調整のピートモス、ヤシガラ、水苔などが考えられます。特に水苔はヘビの床材に使われることも少なくない素材のようですが、ブレンドすると顕著に強い酸性傾向を示しますのではっきり不向きだと言えるでしょう。

また、床材にブレンドしたり、地表に敷いて使うとよいものとしては "枯葉" があります。枯葉は微細生物の餌として有効ですし、地中の通気性や保水性の面からも非常に優れた素材です。
農薬、薬剤散布の心配がなければ近くの公園から拾ってきたものが使えますので実質的には無料。こうしたコスパの高さも大きなメリットの一つだと言えるでしょう。


ここまで、床材に使用できる素材についてご紹介してまいりました。
少し長くなりましたので一旦ここで一区切りとして、次項では土の交換時期やリサイクル、そして地中の微細生物についてご紹介しようと思います。 
床材は広げようと思えばいくらでも広げられる奥の深い話題ですが、まずは基本的な内容に絞ってご紹介して行きたいと考えています。

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