見出し画像

ヘビは私たちの '眼' を見ている

餌を与えると感じることの1つは、多くのヘビが摂餌の際に視覚に依存する割合がとても低いということです。
すぐそばに餌を置いてもまるで気づかない様子で、あたりをウロウロした後、舌で餌が発する匂いの粒子を集め、ようやくそれと気づいて餌にアタックするといったことが少なくありません。

では彼らが全く眼が見えていないのか、というともちろんそんなことはありません。素早く動くものには非常に敏感で、特に上下・左右に直線的に素早く動くものを非常に怖がる傾向があると感じています。
当たり前と言えばまったくその通りですが、こういうはっきりとした動きは視神経が捕らえやすいのだろうと思います。

ではゆっくりと近づけば彼らに気づかれることはないのでしょうか。

経験則としては、ヘビが人を察知するためのキーは2つあるように感じます。
そのうちの1つは、トカゲの捕獲の際にも感じることの多い(他に適当な表現が思いつかないので敢えてこの言葉を使いますが) 人が発する '殺気' によるものです。

ヘビを意識していない人が通ると全く動じることがないのに、ヘビに関心の的を向けている私などがそばに近づくと、大きく身体を波打たせて深呼吸をする。緊張状態を示す動作です。
これは何だろう。なぜ無関心の人とそうではない人がわかるのだろう、とこれまでに幾度となく感じてきました。彼らの '六感' とも取れるし、先の通り私が発している '殺気' がそうさせるのかとも思いますが、実際のところは正直、わからないというところです。

ヘビが人を察知するキーのもう1つが眼と眼、いわばアイコンタクトです。
飼育下においては特に(よほど大きな振動を立てれば別ですが、そうではない限り)手や足がヘビの視界に入っても彼らが気づかないことが少なくありません。
一方で、彼らの視界にこちらの視線を交差させると間違いなくヘビは人の存在に気づきます。

農業において鳥の被害を避けるために、眼のようなデザインのアイテムを使用することがありますが、あれと同じく '眼の造形' にヘビが反応しているのか?
印象としてはそうではないように思います。これもまた、眼から発するある種の '殺気' がヘビの視覚に信号を送っている。そんな気がすることが少なくありません。

自然下においては敢えてヘビにこちらの存在を気づかせるために視線をヘビの視界に合わせることが有効な場合もあります。特に有毒種の場合には、突発的な事故を防ぐために。
多くのヘビは(特に国産種、なおかつ汎在種のマムシやヤマカガシなどは)人に気付けばたいがい向こうから逃げてゆきますし、よほど追い詰めない限りは飛びかかってくるようなことはありません。

いずれにしても、ヘビとの 'アイコンタクト' をうまく使うことが飼育のさまざまなシーンで有効な場合があります。

例えば掃除の際にケージの隅に移動して欲しい。
あるいはこちらは(いつも通り)危害を加えるつもりはないからその美しい姿をもう少し眺めさせて欲しい。
そしてまた、いつもより少し具合が悪そうに見えるが大丈夫か?(できればその場所から動かないで身体の様子を観察させて欲しい)etc…

ヘビとの信頼関係を築くためのキーとして、彼らとの 'アイコンタクト' は決して侮れないものだと感じることが少なくありません。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集