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【書評】 「あたりまえ」のつくり方 ——ビジネスパーソンのための新しいPRの教科書

「あたりまえ」のつくり方 ——ビジネスパーソンのための新しいPRの教科書

世の中に「あたりまえ」を創造するPRの真髄とは?


PRの本質的な役割とは

本書の著者である嶋浩一郎氏は、PRを「新しい『あたりまえ』を世の中に定着させるため、あらゆるステークホルダーと対話し『合意形成』を目指す活動」と定義しています。

この定義は、従来のPRの概念を大きく拡張するものです。

私たちが一般的に思い浮かべるPRとは、プレスリリースの配信やメディアへの露出、SNSでの情報発信などが中心です。

しかし、本書ではそれらはPRのごく一部に過ぎないと指摘します。

真のPRとは、社会全体を見渡し、様々な立場の人々との対話を通じて、新しい価値観や行動様式を「あたりまえ」にしていく戦略的なコミュニケーション活動なのです。

現代社会が直面する波と変革の必要性

著者は現代社会が直面する大きな変革の波として、テクノロジー、ダイバーシティ、サステナビリティという3つの潮流を指摘しています。

テクノロジーの波は、AIやIoTなどの新技術による生活や働き方の根本的な変化をもたらしています。

これらの技術を社会に受容させるためには、技術的な優位性だけでなく、社会的な合意形成が不可欠です。

また、ダイバーシティの波は、多様な価値観や生き方を認め合う社会への移行を促しており、既存の「あたりまえ」を大きく揺るがしています。

さらに、サステナビリティへの関心の高まりは、企業活動や個人の生活様式の変革を求めています。

これらの変化に対応するためには、幅広いステークホルダーとの慎重な合意形成が必要不可欠となっています。

効果的なPR活動の原則と実践

本書では、効果的なPR活動を展開するための重要な原則として、まず第三者の力の活用を挙げています。

新しい「あたりまえ」の創造は、一企業や一個人では成し得ず、影響力のある第三者との協力関係構築が不可欠です。

次に、多様なステークホルダーの巻き込みの重要性を説いています。

消費者、従業員、株主、地域社会、行政機関など、様々な立場の人々を巻き込むことで、新しい価値観の社会実装を加速させることができます。

さらに、継続的な対話の重要性も強調されています。

合意形成は一度きりのイベントではなく、継続的なプロセスとして捉える必要があります。

社会環境の変化に応じて、常に対話を続け、合意内容を更新していくことが求められます。

また、社会視点からの価値提案も重要です。

市場における競争優位性だけでなく、社会全体にとっての価値を示すことで、より幅広い支持を獲得できます。

そして、ファクトに基づくコミュニケーションの重要性も説かれています。

感情や主観に頼るのではなく、客観的なデータや事実に基づいて議論を進めることで、異なる立場の人々との建設的な対話が可能になります。

新しい「あたりまえ」を創造する実践的アプローチ

著者は新しい「あたりまえ」を創造するための具体的な方法として、いくつかの重要な「補助線」を提示しています。

まず、表面化していない社会的ニーズや欲求を見出すインサイトの発見が重要です。

これに加えて、新しい概念や価値観を、わかりやすい言葉や象徴として定着させる社会記号の創造も効果的です。

さらに、個別の商品やサービスを、より大きな社会的文脈の中に位置づける社会視点からの再解釈も必要です。

また、メッセージに適度な「余白」を残すことで受け手の主体的な解釈と参加を促す創造的な解釈の余地も重要な要素です。

客観的なデータや事実を効果的に提示するファクトの戦略的活用、メッセージを発信する主体の適切性と信頼性を確保する発信者の正統性、そして新しい価値観の導入に伴う摩擦や反発を予測し対応策を検討するリスク予測と対応も、実践において欠かせない要素として挙げられています。


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本書を読んだ感想

本書を読んで最も印象的だったのは、PRを単なる情報発信や宣伝活動としてではなく、社会変革のための戦略的なツールとして捉える視点です。

特に興味深かったのは、「あたりまえ」の形成プロセスに関する分析です。

私たちが日常的に使用しているスマートフォンや、当たり前のように実施しているテレワークも、最初は社会に受け入れられるまでに様々な議論や調整が必要でした。

本書は、そうした「あたりまえ」が生まれる過程を詳細に解説し、それを促進するためのPRの役割を明確に示しています。

また、著者の30年以上にわたるPR業界での経験に基づく具体的な事例や実践的なアドバイスは、非常に説得力があります。

特に、様々なステークホルダーとの合意形成の方法論は、現代のビジネスパーソンにとって必須の知識となるでしょう。

さらに、本書が提示する「社会視点」というアプローチは、今日のビジネス環境において特に重要だと感じました。

企業の社会的責任が強く問われる中、市場だけでなく社会全体を見据えた戦略立案の必要性を改めて認識させられます。


本書を特におススメしたい人

  • 広報・PR部門で働く実務者の方々

  • 新規事業の立ち上げや、イノベーションの社会実装に携わる方々

  • 組織変革や文化醸成に取り組む経営者・管理職の方々

  • 社会課題の解決に取り組むソーシャルセクターの方々

  • マーケティングやブランド戦略に関わる実務者の方々


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本書のまとめ

本書は、PRを通じた社会変革の本質と実践方法を包括的に解説した画期的な一冊です。

著者は、PRの本質を「新しい『あたりまえ』を創造するための合意形成活動」と定義し、その実現のための具体的な方法論を提示しています。

特に重要なのは、様々なステークホルダーとの対話を通じた合意形成のプロセスです。

本書では、この過程を5つの原則と7つの実践的方法論として体系化しており、これらは現代のビジネスパーソンにとって極めて有用な指針となります。

また、テクノロジー、ダイバーシティ、サステナビリティという3つの波に直面する現代社会において、新しい「あたりまえ」を創造することの重要性と、そのためのPRの戦略的活用について深い洞察を提供しています。


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