【書評】 管理職の手帳 BASIC100 部下に慕われ、上司に頼られる仕事のヒント
部下の心を開く「対話力」が管理職の成功を決める ― 即実践できる上司のための心理的安全性コミュニケーション術
本書は、管理職という立場にある方々が日々直面する様々な課題に対して、実践的かつ体系的なアプローチを提供する一冊です。
著者の岡野隆宏氏は、管理職の悩みを解決するためには「現実論」と「原則論」の両方が必要だと説きます。
目の前の問題に対する対症療法的な解決策(現実論)と、問題の予防や本質的な改善のための根本的なアプローチ(原則論)を組み合わせることで、より効果的な問題解決が可能になるという視点は非常に示唆に富んでいます。
特に注目すべきは、本書が提唱する「対話」の重要性です。
著者は、単なる会話や議論とは異なる「対話」の特質を明確に示しています。
対話とは、特定のテーマに沿って話し合うものの、必ずしも結論を求めないコミュニケーションです。
この定義は、現代のビジネス環境において極めて重要な意味を持ちます。
なぜなら、多くの企業で見られる「対話不足」は、業務の非効率性や職場の人間関係の歪みの根本的な原因となっているからです。
著者は、この対話不足の背景には「業務の多様化」「必要性の認識不足」「上下関係の影響」などがあると指摘しています。
本書の特筆すべき点は、実践的なコミュニケーション技術の解説です。
特に「アクティブ・リスニング(積極的傾聴法)」については、具体的な手法とその効果が詳細に説明されています。
相手の発言だけでなく、非言語表現にも注意を払いながら、真の意図を理解しようとする姿勢の重要性が強調されています。
また、本書は「和」の概念を現代のビジネスコミュニケーションに適用する視点も提供しています。
吉田松陰の言葉を引用しながら、力による統制ではなく、相互理解と調和を重視する管理手法の有効性を説いています。
さらに、本書は各章をモジュール的に構成することで、読者が必要に応じて関心のある部分から読み進められるよう工夫されています。
これは、多忙な管理職の実態に即した実用的な配慮といえるでしょう。
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本書を読んだ感想として
本書を読み進めながら、現代のビジネス環境における「対話」の重要性を改めて認識させられました。
特に印象的だったのは、著者が提唱する「聴き上手」の概念です。
多くの管理職は「話す力」の向上に注力しがちですが、本当に必要なのは「聴く力」かもしれません。
相手の話を真摯に受け止め、その真意を理解しようとする姿勢は、チームの信頼関係構築に不可欠な要素です。
本書が提案する「対話」のアプローチは、近年注目される「心理的安全性」の確保にも大きく貢献すると感じました。
相手の価値観や考え方の違いを認識し、それを受け入れる姿勢は、創造的な職場環境の構築に直結するものです。
また、本書の実践的なアプローチも高く評価できます。
理論だけでなく、具体的な状況に応じた対応策が示されているため、読者は自身の職場環境に即座に適用することができます。
本書を特におススメしたい人
- 新任管理職の方々
- チームのコミュニケーション改善を目指すリーダー
- 部下との関係に悩む中間管理職の方々
- 組織の活性化を図りたい経営者
- キャリアアップを目指す若手社員
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本書のまとめ
本書は、現代の管理職に求められる「対話力」の本質とその実践方法を、理論と実践の両面から解き明かしています。
特に重要なのは、単なるコミュニケーション技術の向上だけでなく、相手の立場や考えを理解し、受け入れる姿勢を育むことの重要性です。
著者が提唱する「現実論」と「原則論」の組み合わせは、管理職が直面する様々な課題に対する効果的なアプローチを提供しています。
本書の学びを実践することで、より良い職場環境の構築と、組織全体のパフォーマンス向上が期待できるでしょう。