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第3回角川U-25短歌選手権応募作品 25首連作『滞留する夜』

慣性の法則めいたいとなみを編んで座礁のような夕暮れ

歓びも楽しみもあるようだった スクランブル式の後夜祭

僕だけが見ているものに影はなくラストノートの色のネオンが

いき急ぐ人を追い越せないバスで左半身ゆっくりしずむ

水滴をそのまま握る 隔たりも覚えられないバーカウンター

シシュポスに少しだけ似た者共の落石事故にご注意ください

アンビエントを奏でていれば鍵盤の上にも夜が夜を探して

醜形をおそれつ嗤う子どもらのピアスホールも上唇に

いつまでももたれていたく背泳ぎの級からわざと進まずにいた

競走馬たちを眺めるほんとうはずっとうかうかしていたかった

感情も意志も結局論理だし今はそいつらみんなきらいで

終着がわからないまま水を掻いてそのまま破水したいと思う

あたたかそうな日が差している対岸は目指さぬことにした影法師

どうせ死ぬなんて試しに言ってみる たまに明滅する常夜灯

トラックが猫の死骸を轢いてゆく せめて二度死ぬことができたら

光源を替えてもわれは星屑にさえなれないで蛾のようなふみ

浴槽の色の水面 こんなにも近いこと蛾のつぶせないこと

何枚も重ね着されて僕よりも暖かそうな椅子の背もたれ

静寂は叫びのひとつのありかたで細胞膜が吐き出す涙

やわらかくなれない人の飼う夜がまだ起きていて星はさんかく

泥団子みたいに苦くブラジルの朝に眠ってみる瓶麦酒

部屋がまだごつごつしている 二時間のBGMの最後の五分

春の匂いにマスクを濡らす人間はここにもいない崩壊前夜

落雷の音で目覚めるいつまでも完成しない自由研究

幾周も廻れよ鳶そのための空だよきっとここにあるのは









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