本当の、一期一会
恐らく10年か、それ以上前になる。東京で先生のご自宅に書道のレッスンに行った翌日、畠山記念館を訪れた。
※現在は改修工事のため休館中
茶道を習い始めて数年経ち、茶道具にも興味が芽生え始めた頃だ。
畠山記念館とは
記念館は豊かな自然の中にあり、室内の一角にある茶室ではお茶をいただけるという。
展示を観終わったあと、一服いただいていこうと思い、申し込みをする為に並んでいると、隣に居らっしゃった中年の女性に話しかけられた。
お茶をしているのか。どこから来たのか。そんな話をしたと思う。その方も茶道をされていて、偶然同じ表千家であった。その方が
「ここは私にごちそうさせてください」
そう言った。
驚いた。まさか初対面の方にお茶をご馳走になるなんて。
甘い干菓子をいただく。
口の中に残った甘さとお茶の苦味が丁度良い。
いいお茶は、甘いお茶ではない。
そう思う。
別れ際、その方はこうおっしゃった。
「お若い方、これから日本の文化を伝えていってくださいね」
名前もわからない。
しかし小さなお茶室で間違いなく同じ時を過ごした相客。
もうこの方とお会いすることはきっとないだろう。これが本当の一期一会なんだな。
いつか私より若い人にお茶をご馳走する機会に恵まれたら、同じことを言ってみようか。
そんなことをお茶を点てながら思い出す。
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