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今度は苗字が多すぎる!?
それ、一歩間違えれば危ない人だよと言われてしまいそうですが、私の楽しみのひとつに、街なかでの“名前ウォッチング”があります。
どういうことか説明すると、私は犬を飼っており、犬との散歩で住宅街を歩きながら、いつもいろいろなお宅の表札を眺めているのです。ただひたすらに散歩するのも暇ですし、昔から人の名前には並々ならぬ関心があるゆえかもしれません。
苗字というと、世界で最も多くの種類があるのはアメリカで、日本はドイツとともに第3位です。アメリカは多民族国家で移民も多く、苗字にも多くのバリエーションがあるのは納得できます。
けれども日本の場合、もちろん外国の方もいらっしゃるものの、圧倒的多数の国民が同じ文化とルーツを持っています。そのため日本は世界的に見て、かなり苗字にバリエーションがある国と言えるのではないでしょうか。
その証拠に、日本の苗字の多様さは驚くべきで、たとえば書店や図書館に並ぶ苗字辞典の分厚いこと。
私が実際にこの目で確かめただけでも、ごく一般的なご苗字のほか、読みも迷うような変わったお名前も少なくありません。
例を上げれば、思わず立ち止まってしまったのが椚座さん。くぬぎざさんとお読みする、なかなか出会う機会の少ないお名前です。
他にも、祝の一文字のいわいさん。寿の海と書く寿海(じゅかい)さん。新年から、なんとも福々しいしいお名前です。
西園寺(さいおんじ)さんに宮苑(みやぞの)さんは、いかにも由緒ありげで高貴な感じ。
伊良波(いらは)さんに伊波(いなみ)さんは、きっと沖縄ルーツの方でしょう。
個人的にうらやましいのは動物の名が入ったお名前で、犬飼(いぬかい)さんに猫居(ねこい)さん、小鳥遊(たかなし)さんに鶏冠居(とさかい)さん、熊野さんに馬来(うまくる)さん。ヨーロッパの紋章さながら、家紋に動物があしらわれていたりして、などと空想を広げてしまいます。
もちろん楽しいばかりでなく、名前に関するやり切れない事情もあります。
年末に見たドキュメンタリー番組で、無国籍の青年が苦労して国籍を得たものの、代償に今まで自分が使用してきた苗字を失う、というくだりがありました。
その方のお母様は、もともとのあなたの名前じゃない、あなたにその家系の血は入ってもいないのだから、と諭すように慰めていましたが、青年は落胆しきりです。ずっとその名前と自分を重ねてきたし、職場でもそう呼ばれている、今日から急に別の名前だなんて、すんなり気持ちを切り替えられるわけがない、と。見ているこちらにも葛藤が伝わるような、複雑な表情を浮かべていました。
夫婦別姓の議論にもつながるようなお話ですが、それまで自分が慣れ親しみ、他人からも認識されてきた名前を突然失うというのは、大きな混乱をもたらすものに違いありません。
青年が少しずつ心の整理を行い、新しい名前とともに、以前よりなお幸せに暮らせることを願います。
心理学者は、名前は人のアイデンティティーの根幹をなすと言います。
日本中、あらゆる地域に特色あるお名前があり、そのひとつひとつの意味や由来、歴史を辿ることに、大いに興味をそそられます。多種多様でどこまでも奥の深い名前に対し、これからも興味はつきそうにありません。
あまりに熱心に表札を見つめすぎることのないよう、ほどほどに名前ウォッチングを続けていきたいと思います。
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