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ジェイソンが不死身でも許せるなら、ナマケモノでも許せるはず(レビュー『キラーナマケモノ』)

オススメ度:★★★☆☆

大学の女子社交クラブ(ソロリティ)「シグマ・ラムダ・シータ」に所属するエミリーは、大学4年の最後の年になっても地味でハネない学生生活に焦りを感じていた。エミリーはショッピングモールでペット業者の男オリバーと知り合う。男はエキゾチックな珍しい動物を扱っており、エミリーの心を見透かしたように、人気者になりたいならナマケモノを飼わないかと持ちかける。一旦は断ったエミリーだが、寮母のミス・メイに背中を押され、会長選挙の人気取りのためにナマケモノを買いに行く。しかしオリバーの家はもぬけの殻だった。実は前夜のうちにオリバーはナマケモノに殺されていたのだ。家の中でナマケモノを見つけたエミリーは思わず寮に連れ帰ってしまう。

 色々と素養を試される作品である。当然ながら評価は分かれるであろう。

 本作では、序盤、ナマケモノがワニにより水中に引きずり込まるも、ワニを返り討ちにする描写から始まる。そこまでを見て私はこう思った。

「なるほど、人類に範馬勇次郎がいるようにナマケモノにも突出して武に長けた個体がいてもおかしくはない。これはそういう個体を描いた作品なのだな」

 ……と。

 既にこの時点でだいぶ癖が強いが、しかし、私の上記の認識は適切ではなかった。その後の描写は「突出した武」ではとても説明がつかないのである。

 まず、このナマケモノ、意外と知性派である。事故に見せかけて人を殺そうとするし、凶器として刀も使う。「まあ、ケダモノでも、ワンチャン、刀くらいは使うこともあるかな?」と思うかもしれないが、なんなら車も乗りこなすし、さらにはマウス操作もする。SNSにセルフィーをアップするなどのITリテラシーまで持ち合わせて、最後の最後には喋りすらする

 耐久力もすごい。作中で最低でも三回は致命傷を負ったはずだが、なぜか死なない。ラストで生きて故郷に戻ったと考えるなら、あれだけの重症でも死ななかったことになる。鈍器でメッタ殴り、日本刀で貫通、銃弾3発、さらに頭にティアラをブッ刺されたのだが、とにかく生きている。意味が分からない。

 そもそもなぜ寮生たちを殺すのかも、何の説明もない。『ゾンビーバー』なら「ビーバーがゾンビになったから」、『コカインベア』なら「クマがコカインでキマってるから」と、何かしらの人間を襲う理由があったが、そういったエクスキューズが本作には一切ない。

 なぜ強いのか、なぜ知能が高いのか、なぜ不死身なのか、なぜ殺すのか、それら全てが一切合切なんの合理的根拠もないのである。なので、人を選ぶ

 で、本作の解法(正しい楽しみ方)はおそらく、

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