二日酔い
先日亡くなった田村正和さん主演ドラマ「パパはニュースキャスター」などで、二日酔いになった主人公が「頭が痛い。大きな声で話さないでくれ」という場面が出てくる。
当時20代だった私は、これは単なる演出で大げさに言っているのだと思っていた。
会社に勤めるようになって、上司が「そんなに大きな声で喋るな。頭に響く」と言ってるのを聞いても、何を大げさなことを言っているのだろうと思っていた。
当時の私はどんなに酔っ払っていても家に帰り、ベッドに倒れ込み、数時間寝れば自分の中で気持ち悪くなって目が覚め、シャワーを浴びてから、もう一度ベッドに倒れ込めば、朝、眼が覚めた時にはもう平気になっていた。
ドラマの主人公や、かつての上司たちが、決して大げさに言っていたのではない、ということを身をもって理解するようになったのは30代後半である。
二日酔いという言葉は、宿酔いとも書く。若い頃は、日帰りでお帰りになってくれた酔いが、なぜかお泊りになって、翌日も体の中から帰ってくれない。まさに宿酔いである。
40代での無理がたたって大きな病気もした。その後は、酒飲みの大先輩からの助言に従って、美味しく安全に飲む飲み方を遵守しているつもりである。しかし、年に一度は道を踏み外す。なぜ、こんなことになってしまったかという自己嫌悪と身体的な気分の悪さが相まって、どうしようもない状態に陥る。
頭が痛く食欲もなくひたすら水だけを飲む。やがて頭の痛さが消え、気分の悪さもおさまり、しばらくすると腹が空いてくる。ここまでたどり着けば後はもう少しだと、長年の体験で体得した。
軽く食事を採る。しばらくして、腹の中が落ち着けば、ほぼいつもの状態となる。
落ち着けば、「いったい、なにをやってるんだろう」と笑う元気も戻る。そして、また「二度とやるまい」と誓うのである。