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価格戦争からは完全に身を引く │ カフェ開業メソッドvol.07
個人店(特にここでは一人だけで運営することを前提としています)が、長きに渡って営業を続けていく場合の方法というものがあります。
弱者の兵法的な話になりますが、結論としては、
・メニューの数を広げない(先週述べたとおりです)
・価格競争をしない(今週の本題です)
・あまり大きなハコではやらない
の三つであり、三つ目の「あまり大きなハコではやらない」はそれだけだと大変な落とし穴にハマる恐れもあるので、ぜひ今後の(次週かな?)注意を読んでほしいのですが、最初の二つに関してはもう鉄板の掟とし、よほどのことがない限りこの掟を守り通すことをオススメします。
今回の趣旨は「価格競争をしない」です。
だいたい、もともと資本力もない個人店が価格競争をやって大手チェーン店に勝る点など何一つありません。普通に考えてわかる話だと思うのですが、この普通が、それこそ最初はいいのですが、お店が始まり、お客さんが来なかったり、お客さんに「もっと安くしないと厳しいでしょ」とか言われたりするうちに「普通」は簡単に揺らぎます。
まずは鉄の掟をグっと気を張って守り続けましょう。
ここまでは当たり前過ぎて書いていても面白くないのですが、ここから面白くなります。
ここからさらに切り込みますね。ただ単に「強気の値段設定でいくべし」ということではありません。
例えば仕入れた食材の質と値段が同じものを、同じような商品にして売る場合、当然価格は安いほうが売れます。市場の論理です。そして、「良いもの(飲食の場合、美味しいものと言い換えましょうか)を安く」というのももはや大手チェーン店では成立してしまっています。「普通のものを安く」、もちろん勝てません。「おいしくないものを安く」、もうやめましょう。
では、個店は大手チェーン店には絶対に勝てないのでしょうか?
ひとつ、あるんです。いい感じに空いてる土俵が。
言いますね。それは、「美味しいものを安く」ではなく、ズバリ、「メチャクチャ美味しいものを少し高く」です。
「高く」は少し語弊があって、正しくは、「かなり上質な(必然的に高価なものになることが多い)ものを適正価格で」ということになります。この部分が実は大手が参入してこない(出来ない)ことが多いのです。大手複数チェーン店というのは絶対数をさばくことで利ざやを稼いでるわけです。ですから「かなり上質なもの」をそんなに数を仕入れることは出来ないし、出来るのであればそれは「かなり」ではなくせいぜい「ちょっと上質なもの」どまりです。この手のものを大手が扱うことにあまりメリットがないのです。何も高級店を開けと言ってるわけではありません。
ここでいう「かなり上質なもの」とは仕入れの食材、素材、原料あたりの部分で、それを以前ここで述べた「ちょっと多め、またはガツンと多めに使う」というのを実行するのです。こうして出来たメニューがチェーン店なみに安くなるわけがないことは、あなたも、そしてそれを味わうお客さまも必ずわかります。
お客さまの口から出てほしい言葉はズバリ、
「少し高いけどメチャクチャ美味しいねこれ」というフレーズです。
そしてそのお客さまの脳内に「ここの○○はメチャクチャ美味しい」という刷り込みがなされるとしめたものです。そういうお客さまをいかにたくさん作ることが出来るかが大事です。そしてこのようなお客さまが最も望ましいお客さんということになります。
値段は少し高めになるわけだからもちろんそんなにたくさんの来店頻度というわけにはいかないと思いますが、時が経つにつれお客さまの分母の絶対数が増えるとかなりの繁盛店が見込めると思います。
そこで、我慢出来ずに、「美味しいのは間違いないわけで、もっと多くの人に早く知ってもらったほうが得策だから、お試し価格的に値引きをしよう」という考えに私は懐疑的です。最も望ましいお客さんはきっと全く値引きしなくても来てくれます。値引き期間だけ来るお客さんは「長期に渡って来店し続けるお客さま」にはあまりならないもので、さらにこれは個人的考えですが、「値引きをすると、意図しないお客様構造へと店内の空気も変わるかもしれず、さらにはいつも定価で購入してくださるお客様に失礼」という発想が私にはあります。
一週間だけ、あるいは一年だけといったスパンではなく、何十年といった長期に渡り経営していくお店をここでは主人公にしたいので、自身のお店がやがて「名店」と呼ばれることを強く望んでほしいのです。
「名店」と呼ばれるためには「ブランディング」が大切です。
値引き安売り合戦は名店へのブランディング行為から最も遠いものです。
自店が扱う商品、さらにはそれを定価でしっかり評価してくれる誇るべきお客様に敬愛の意を込めて、歯を食いしばり、握ったコブシに爪が刺さるくらい、いやそんな状況にはならないとは思いますが(笑)、でもとにかく「値引きだけはしない」ということに統一してしましましょう。
次回は三つのうちの最後「あまり大きなハコではやらない」についてですが、きっと今みなさんが予想してることではない話がメインになるのできっとタイトルも変わるでしょう。