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Vol.21「あとは物件だけなんだよー!!焦燥から結果オーライへ」

前回まで述べた基本三大コンセプトは、もう何年も前から出来ていて、その後、会社を辞めた。

修業もした。食材ルートのアタリもついた。目標貯金額も到達した。

全額自己資金ってわけにいかないから融資が必要だった。

融資は先にまず物件が決まらないと応じてくれない(なんでよ?!)。

内外装設計も物件が決まらないことには見積もりも出ない(そりゃそうか)。

俺の中での予定は去年の11月に店はオープンするつもりだった。

ただどうにも物件が決まらないんだから先に進まない。

10月を過ぎ、不動産屋にもとうとう「商店街沿いじゃなくても、少し外れたところでも考慮に入れたいと思いますので、どんどん教えてください。」と言った。

空き物件は全て見に行った。自転車で。

ネットでの店舗専門サイトの人からも頻繁に情報は来たが、その情報よりも俺の方が早く、「そこならもう行ってきました」とか、「ああ、あそこは確かにいいとは思ったんですが、天井が低いんですよね」とか、だんだん相手の業者も「赤澤さんはもうご存知かもしれませんが・・・」というマクラ言葉がつくようになってきた。

ああ、別に物件情報のエキスパートになんかなりたくないのに・・・

ヤバイ、自己資金としての貯金額を食いつぶしていく・・・

そんな時、懇意にしてくれている不動産屋さんから、「商店街をほんのチョットだけ曲がったところのお店が、夏からずっと閉めてて、間もなく更新の時期だから、あそこが空くんじゃないかな」という情報をゲットした。

確かに場所もよかった。

ただそれなりに家賃が高い。20万以上する。保証金も200万以上。

予算面で厳しいが、もはや選択の余地はない、とも思った。

よく家賃の値下げ交渉するとか、保証金や礼金をマケてもらうとか、その方法とかが書いてある本とかもあるが、現実はというと、そんな状況は稀である。

需要と供給の問題なわけだから、好立地の物件は値切ってる場合じゃない。

一般的に一件につき5人の希望者がいると言われる。

「マケてくんない?」とか言った瞬間に秒殺KOされる。

他にいくらでも希望者はいるのである。

だから値切るどころか、5人の候補者の中で、いかに最も大家さんや不動産屋さんに気に入られるかにかかっているのである。

基本的に大家さんと接触することは稀だろうから、こっちが出来ることといえば、いかに不動産屋さんに最初に声をかけてもらえるかどうかである。

ちなみによく「テナント募集」か「空き店舗」とかの張り紙があるところがあるが、ああいう公開されているところは、逆に借り手側の天下であり、値切る余地も大いにある。

ただ、好立地のところっていうのは、そんなことする間もなく一瞬で決まるから、公開告知の必要すらないのである。

さて、その「もうすぐ空くかもしれない」と言われた物件、もし空いた場合は、他に声をかけず、必ずあなたに紹介する、と言ってもらえた矢先、ナント、そこの物件、更新したとのこと。不動産屋もビックリしてた。

その後半年たった今でさえまだ閉まったまんまである。

更新してどうすんのよ!ナゾ多すぎ。

でもとにかくその物件もなくなった。かなりの絶望だった。

そんな中、不動産屋さんが「来年の春ぐらいになったら、空くっていうところ出てきたけど、さすがにそんなに待てないでしょ?」と言ってきた。

場所はナントひたすら恋焦がれてた第一希望の仲見世商店街沿い。

10坪強、間口も広い。天井が高い。まさに理想的である。

家賃や保証金もリーズナブル。

聞けば、そこの物件は創業以来60年続く老舗の衣料店で、大家さんもその人になる。店の不振撤退ではなく、引退・勇退である。

老舗ならではの莫大な顧客数の皆さんにしっかりと挨拶をし、閉店のお知らせをし、最終セールをやるためにももうワンシーズン続けたいとのことだった。当然である。

大家さんも大変素敵な人柄で、こんな歴史がある老舗の後を継ぐなんて、すごく気持ちがいいことだし、「綺麗な商売の魂(!?)」みたいなものが棲みついてるような気もした。

でも何しろ衣料品店から飲食店への完全なる業種チェンジである。

トイレも作んなきゃいけないし、ガス・水道、あらゆるインフラもやり直しである。

ただ、俺は個人的に「居抜き物件」っていうのが好きじゃないということもあり、スケルトンから始めることはむしろ歓迎だった。

悩みに悩んだ挙句、妙に現実的でクールな考えが生まれた。

あの更新されてダメになった物件と、今回の物件がもし同じ家賃・保証金であったとしても、今回の物件のほうがいい。

なんたって、ずっと思い続けた仲見世商店街沿いなのである。

仮に前の物件が更新せず、そこに決めていたらかかっていた費用と、今回の費用を比べると半年間の生活費以上の差はあり、既に得である。

つまり、これから半年、じ~っと待つ価値は十分にあり、その間、生活費がかかってしまうが、金額的にも損とはいえない。

ということに気づき、待たせていただくことにした。

これは今までのような、出口の見えない不安ではなく、物件のメドがたった上での半年間である。天と地との差がある。

建設作業現場でのアルバイトをして日銭を稼いだ。

そこで、内装の内幕(!?)を垣間見ることが出来た。

当初、メニューのケーキはチョコレートケーキだけが自家製で、他は仕入れにしようと思っていたが、多くの試行錯誤を経て、チーズケーキも身に付け、自家製にすることが出来た。

チョットした備品・消耗品、例えばストローや紙おしぼりなどにいたるまでの業者間相見積もりも出来た(さすがに開店間際にここまで出来る店は少ないと思う)。

何より物件は決まっているわけだから、早い段階で設計士と細かい打ち合わせをじっくり詰めることが出来る。これは相当デカイ!

今にして思えばまさにいいことずくめなのである。

半年前、「あとは物件だけなんだよなぁ~」と、努力や行動だけではどうにもならないタイミングというものを恨んだものだ。

今この、努力や行動だけではどうにもならないタイミングというものに、大変な喜びと感謝を感じている。これぞ結果オーライ!!

次回、設計・内装工事のドタバタ騒動をお届けします。

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