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Vol.16「結局どんな店なの?」

これからは珈琲文明の生命線、三大重要柱を述べていく。

思い入れたっぷりなので、放っておくといつまでも熱く語る恐れがあるんで、出来る限りクールにと自分に言い聞かせながら、一本目の柱は、「どんな店なの?」つまり内外装の基本コンセプトである。

キャッチコピーは「古きよき時代にタイムスリップ」、いわゆる「レトロ」で、「クラシカル」な感じ。

「レトロ&ノスタルジー系」も大好きなんだが、「ノスタルジー」よりも「クラシカル」に重きを置く。

昭和30年代の雰囲気をかもし出すラーメン博物館や、映画「ALWAYS~三丁目の夕日~」、あるいは単に「駄菓子屋」の雰囲気というのは本当に好きで、キュンときまくりなのだが、例えば俺の両親のような、昭和初期生まれあたりの年齢層の人たちの中には、もちろん超リアルタイムだから、懐かしさにキュンとなる人も多いだろうけど、しかし、ある意味あまりにリアルタイムゆえに当時の所帯じみた生活臭や、貧しくて辛かった日を思い出したりして癒されない、という声もヒアリング調査の中で実際にあった。

確かに俺も、自分自身の超リアルタイムであるウルトラマン、仮面ライダー、タイガーマスク、太陽にほえろ!、ザ・ベストテン、フォーク&ニューミュージック、ベストヒットUSA、などに訴えた店がもしもあった場合、それは俺にとってもちろん「懐かしい!」にはなるけど「非日常」ではない。

ニューミュージック(特にアリス)やベストヒットUSAなんてきっと俺のほうが詳しくて、その店に難癖つけそうである。

ノスタルジーと非日常は相容れないものなのだろうか・・・

ラーメン博物館(以下「ラー博」)や映画「ALWAYS」を見て、なつかしー!って思っても実は俺は生まれていない。

まさにこういうことこそが、ノスタルジー(その大部分がイマジネーション)&非日常なのだと思う。

だから実際には体験していない時代で、懐古的要素をもち、非日常的な空間というのが、人が魅力を感じる場所のような気がするのだ。例えばディズニーシーのような。

生まれていない時代といっても、メソポタミア文明とかはダメ(笑)。

そこで考えたのが、現在わが国、いや地球上の誰一人、実体験を持っていないが、時代は近現代のため、多くの資料があり、また自分の親やおじいちゃん、おばあちゃんから間接的に伝え聞いたりして、情報量も豊富で、いろんな人がそれぞれに様々でありながらも、コンセプチュアルなイマジネーションを喚起するような時代・・・、

舞台は横浜、更に俺の好みとして異国情緒とか舶来品というイメージ・・・、

とくればもう「文明開化」の頃しかないでしょう!!ってことで・・・。

そして、これがコンセプトとなり、店名「珈琲文明」にもつながった。

ああ、また理屈っぽく言ってるようだけど、これもまた例によって後付けである。

直感としてまず、「レトロで安っぽくない、重厚な感じ」ていうのがあっただけである。

内装の特色は、アクセントとして「ガス灯」風の電柱は建てようと思うが、基本的に他に小道具はナシ。

こげ茶色の木材と漆喰の壁だけという、シンプルかつ時がたつにつれ味が出る素材に絞りたい。

(※「漆喰」とは・・・石灰を主成分にスサを加え、海藻糊と水を加えて練る。

防火性が高いため、財産を守るよう土蔵に使われていた。

また調湿機能により季節の変化に耐えうる上、遮音性にも優れる。

防音設備をしていない我が店にこれはかなりポイント高い。

さらにシックハウスやアレルギーの人にも優しいヘルシーな素材なのだ。)

このように作りはいたってシンプルにするが、一つだけ強烈にこだわっている部分があって、それは照明効果である。

それこそ「ラー博」や、お台場の「ビーナスフォート」のように、天井に空の絵を描き、照明効果により朝、昼、夜と一日の明るさが変わっていくというやり方。

ビーナスフォートの場合、まさに一時間で一日、夜明け~朝~昼~夕焼け~夜、というようにそっくり二十四分の一のタイム感でなりたっているんだなぁというのが、俺自身が計測した結果である。

単純に二十四分の一だと、当然ながら夜明けや夕方のグラデーション&トワイライトタイムなんていうのはもう一瞬で終わってしまう。

俺はこの一瞬で終わる部分、つまり「夜明け」及び「日暮れ時」をメインにしたかった。

1サイクル(俺は35分としたい)の中の7割強から8割はこれらの時間帯の調光にしたかった。

規定で決まっている店舗内「最低10ルクス以上」は満たす必要があるが・・・。

店の「中」にいながら、お客様は「外」にいるという設定で、調光の具合で空の色が変わっていく。

そして主に夜明けや夕暮れ時を多く堪能でき、日常的ではありつつ、それはやっぱり「非日常」という演出。

ほんの10坪程度の狭い店で、天井を見上げないとイマイチわからないような、結構さりげない演出かもしれない。

でも俺はどうしてもこれがやりたかった。

そしてここにはお金もしっかりかけるべきだと思った。

かくして俺は天井に空の絵を描く、絵描き探し&照明屋探しに奔走することになる。

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