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【第14〜16回】『無頭の鷹』『黄色い雨』『日本人の恋びと』

こんにちは。
文学ラジオ空飛び猫たちです。
2020年にお送りした文学作品を紹介していきます。

硬派な文学作品を楽しもう!をコンセプトにしたラジオ番組です。毎週月曜日7時にpodcast等で配信しています。ラジオをきっかけに、文学作品に触れていただけると嬉しいです。

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【第14回】『無頭の鷹』トルーマン・カポーティ著 〜女と頭のない鷹の絵〜

あらすじ
ある冬の日にヴィンセントが勤める画廊に、自分の描いた絵を買ってほしいと奇妙な女性が訪ねてくる。その絵は頭部を切断された女性と頭の無い鷹を描いた、不気味な絵だ。その絵をヴィンセントは気に入り、女性自身にも関心をもつ。個人的に30ドルで買い取ろうとするが、小切手を郵送するために名前と住所を書いてもらおうとするが、女は「D・J」とイニシャルだけ残し、受け取らず、絵だけ残し帰ってしまう。後日、偶然再会した女性を自分の住まいへと連れて行き、同棲生活をはじめる。しかし、彼女の奇行に耐え切れず、ヴィンセントは、鷹の絵を切り裂き、家から追い出してしまう。

感想・どんな人に読んでもらいたいか
ダイチ
まずこの小説に惹かれたのは主人公ヴィンセントがD・Jの絵を見て、「自分のことをわかっているのか、知っているのか」と感じるところです。本でも映画でも芸術鑑賞でも、たまに自分のことを知っているかのような作品に出会い、ずっと気になったままでいたりします。人には言えない自分の気持ちであったり、自分の闇の部分であったり、このような気持ちにリンクしている『無頭の鷹』は自分にとって忘れられない作品になりました。作品自体はちょっと重めで、よくわからないところもあるけど、不気味さも楽しめます。
ヴィンセントのように生活のためにやむを得ず自身の夢を切り捨てた人には響くと思います。昔読んだときに私もその点は印象に残りました。アメリカの天才小説家といえばカポーティ。未読の人は『誕生日の子どもたち』から読んでみるか、もしくは『ティファニーで朝食を』もいいと思います。

ミエ
普通に生活していると見られない人間の一面で出ています。主人公ヴィンセントはD・Jという存在が現れたことによってまともな人間から破滅寸前の人間になりますが、それはD・Jが現れたことで変化したのか、もともと異常な人間だったのか。考える余地があります。この小説にはわからないところが多々ありますが、文章が美しいし、不思議な存在のD・Jにも惹かれるところがあります。設定や物語からして現実離れした小説なのに、自分ごととして考えてしまったので私にはすごくいい小説でした。
ミステリアスなものが好きな人や人間の闇の部分にそそられる人にはおすすめです。

【第15回】『黄色い雨』フリオ・リャマサーレス著 〜秋、すべてが黄色に染める〜

あらすじ
沈黙が砂のように私を埋めつくすだろう―スペイン山奥の廃村で、降りつもる死の予兆を前に男は独り、身をひそめる。一人また一人と去り行く村人たち、朽ちゆく家屋、そしてあらゆるものの喪失が、圧倒的な孤独と閉塞の詩情を描き出し、「奇蹟的な美しさ」と評された表題作。

感想・どんな人に読んでもらいたいか
ダイチ
孤独感が降り続けてるような小説で、死とか終わりとかに思いを馳せました。『黄色い雨』というタイトルがもたらす印象もあると思いますが、寂寥感があるというか寂しさや哀しさが満ちています。私は感情移入して小説を読むタイプなので、この小説では主人公に感情移入できず最初の方は読むのに苦労しました。最終的には楽しめましたが。
小説に距離を持って読める人というか、第三者的に読める人は味わって読めると思います。それに終わりに向かうような哀しい小説が好きな人にもおすすめです。死や終わることについて考えることができると思います。

ミエ
物語性はないですが、完成度の高い小説だと思います。孤独感が強く、村や家が朽ちていく話だけど美しさがあります。まず文章が美しい。主人公の美学も感じます。主人公が生きた世界、それはスペインの片田舎のアイニューリュ村だけど、そのすべてが消え去ろうとしている中で、残された主人の最後の語りを読むことができます。
いろいろな本がある中で、まさしく不要不急の読書だと思います。楽しめる話でもなく、目的を持った本選びをすると出会わない小説だと思います。でも、一つの世界で最後に取り残された人の言葉や、書き残されたものを読んでみたいと思えたら手にしてほしいです。こんな世界もあったのだと思いを馳せることができるかもしれないです。

【第16回】『日本人の恋びと』イサベル・アジェンデ著 〜一生涯を貫く愛〜

あらすじ
毎週届くクチナシの花、黄色い封筒に入った手紙、お忍びの小旅行…80代を迎えた老人の謎めいた日常の背後に、いったい何があるのか? 老人ホームに暮らすアルマ。日系人イチメイとの悲恋を主軸に過去と現代のドラマが展開する、現代版『嵐が丘』。

感想・どんな人に読んでもらいたいか
ダイチ
愛、老い、人生など大きなテーマをまとめあげている作者の技量に驚かされます。作者が72歳のときに書いているので様々な経験が作中に活きているのだと思います。老人が多く登場することもあり、それぞれの最期を考えさせられました。
現在と過去の両方の物語があるので、長いスパンで展開される物語が好きな人には絶対に向いています。《生涯の愛》がテーマになりますが、描いているのはロマンスだけでなく、様々な現実的な問題や悲劇も登場人物たちは経験しているので、そういう意味では幅のある作品だと思います。文章が読みやすいので、割とすぐに物語に浸ることができます。贅沢な読書になると思います。

ミエ
今をポジティブにさせてくれる小説。老いがテーマの一つだけど、そのときになれば、そのときの楽しみ方を描いています。この小説を読めば、未来には未来にやれることがあるから、まずは今の時代を楽しもうと思えました。時代も設定も人物も多様で複雑なのに読みやすいのも特徴的です。出だしは老人ホームが舞台で老人の話が中心ですが、それがまたおもしろい。作者の筆力がすごいです。
ジャンルとしては恋愛小説だけど、多くの人にとっての当たり前とは違うものも描いていて、生き方や価値観、それに恋愛の形が様々だと教えてくれます。ありきたりなものには満足できないという人はより楽しめると思います。

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