アキ・カウリスマキ監督「枯れ葉」
今年の冬、上映されて話題になっていた、アキ・カウリスマキ監督の「枯れ葉」、ロードショーは見損ねてしまったのですが、WOWOWで放映されたので観ました。「枯れ葉」の存在は他の映画の予告編で知ったのですが、主演女優が「TOVE」でトーベ・ヤンソンをやったアルマ・ポウスティだったので気になっていたのです。美人とは言えないかもしれませんが、温かみがあってユーモアを感じるチャーミングな人だなと思っていました。
正直言うと、アキ・カウリスマキ監督作品は私の好みの範疇ではこれまでありませんでした。底辺にいる庶民のシビアな姿をユーモアをもって描いている印象。なんというか、ちょっと貧乏くさい‥。この映画もそうでしたが、でも、観てよかったと思います。
絶対悲惨なことにはならないという信頼かな‥。安心できるんですよね。シビアな場面でもクスっと笑える余地を残していますし。真っ当な人がひどい目に遭う映画が私はどうも苦手なんですが(共感羞恥の一種)、ひどい目には遭うけれど、悲惨ではないという感じでしょうか。
アンサの巻き添えをくらって一緒にスーパーを首になる二人とか、ホラッパに上着を差し出す男や服をあげる看護師とか、いい人はちゃんといる。ホラッパが大事なメモをなくすミスがあっても、映画館の前で待つという努力を実を結ばせるところとか、まぁそういうシーンにホッとするんです。
ヘルシンキの街、人が少ないなぁと思いました。以前ヘルシンキが出てくる映画を観て調べたのですが、150万人くらいしか人口がない。大都市と言われていますが、東京の1,000万人の都市に住んでいると、それは首都としては小さくない?と思ってしまって。舞台が都心じゃなくて少し外れているのかもしれませんね。工場とかだし。
カラオケってこういうスナックにステージがついてるみたいなところなんだなぁとか、ロッカールームが色鮮やかでさすがフィンランドとか、犬連れて病院入っていいんだ!とか、そういうところに感心したり、アル中、断酒会入ってもそんな簡単に治らないわ!と突っ込みたくなったり、そんな感じですかね。
カウリスマキ監督のいつもの演出ですが、みんな無表情。アンサもやっぱり無表情を顔に貼り付けてるアンサですが、嬉しそうに笑うところがちょっとだけあって。犬を洗ったときと、ホラッパの目覚めを聞いたときかな?それとラストの方のウインク、よかったです。
何故再度メガフォンを取る気になったのか、後からいろいろインタビューも読みましたが、映画観たときは、あぁそうか、ウクライナのせいか‥と思いました。繰り返し聞かれるラジオからのニュース。ヴィンテージなラジオのせいかもしれませんが、現代とは思えず、第二次大戦中かと一瞬錯覚してしいます。「ひどい戦争」とアンサがつぶやきますが‥ホントだね。