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トルコ南東部を行く⑫--バラの香りが漂う甘美なデザート
歴史ある洞窟のキリスト教会や考古学博物館を見学し、路上の市場を散歩して、ちょっと疲れたな、と思い、旧市街の一角にあるカフェに入る。
ここが、なかなか趣きがあって良いカフェだった。ここアンタキヤのカフェというと、実は思い出があって、もう20年ぐらい前の冬、数時間だけ街に立ち寄った時に一軒寄ったことがあった。
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ようは、水タバコを吸いに行ったのだった。室内は水タバコの煙が立ち込め、男性たちがトランプに興じていた。水タバコは、アラブ圏でトンバクと言われるタバコの葉を巻いた葉巻のようなものをヘッドに装着して吸うタイプしかなかった。
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当時住んでいたエジプトでは、まったくと言っていいほど見かけなかったので、面食らったが、ともかくトライしてみた記憶がある。それから20年、再訪したアンタキヤで、この思い出のカフェがまだあるか、が気になっていた。当時の写真をスマホに落としていたので、カフェのキャッシャーに座っていた主人らしき人に聞いてみる。
「知らないね」と言われる。その後も街で年配の男性の何人かに聞いてみたが、知っている人はいなかった。
このカフェは、旧市街の目抜き通り沿いにあり、創業110年の老舗「アファン・コーヒーハウス」。木造の古めかしい造りで、アンタキヤていう街の歴史を感じる空間だった。
さらに、驚いたのが、ショッキングピンク色が鮮やかなデザート。牛乳プリンの上にトルコアイスのドンドルマがのり、ピンク色の薔薇水が注がれているものだった。
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スプーンですくうたびに、ふんわり芳香が漂う。バラの国、シリアにほど近い、トルコ南部アンタキヤらしいデザートだと思った。
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