遅まきながら、カフェバグダッドとは
「カフェバグダッド」を、どう紹介すればいいか。10年以上前には、こんな書き出しの自己紹介文を書いたことがあり、今も使うことがある。
「カフェバグダッド」は、中東、特にアラブ世界の奥深い文化を日本に紹介する目的で、2004年5月に設立された任意の民間活動団体です。
「団体」というと大げさかも知れない。いろいろと手伝ってくださる人はいるが、基本1人でやっている。
以前の自己紹介文、内容はこれで正しい。でも、言い方がかしこまり過ぎている。だって、なんといっても、カフェである。肩ひじ張って行くような場所ではない。のんびりと、ぼおっとしながら、コーヒーや紅茶やその他ドリンクを飲む場所だ。中東ののんびりしたカフェの雰囲気を日本で再現する、今はその辺が大事なのかな、と思っている。
人々が集い、語らうカフェは、世界のどこの国でも、人々の文化活動の拠点です。アラブで、マクハーあるいはカフワと呼ばれるカフェも例外ではありません。「カフェバグダッド」という名の仮想のアラブ式カフェを出現させ、そこで行うアラブの音楽、文学、映画などの文化芸術についての語らいなどを通じ、表層的ではなく地に足のついたアラブ理解を積み上げていきたいと考えています。そのことが、「テロ」「イスラム過激派」「民族・宗派間紛争」といった言葉で紋切り型に語られがちなアラブ世界の実像を正しく理解し、ひいてはアラブ世界とよりよい関係を築くことにつながっていくと考えるからです。
これも以前書いた自己紹介文。思いは、今もまったく変わっていない。ただ、これも固い。肩ひじ張りすぎている。もっと力を抜いて楽な気持ちで仮想でも、リアルでも「カフェ」をやりたい。
普段は、ネット上で、「仮想空間のカフェ」を営業しているつもりだ。ボールの壁打ちのような書き込みを続けているが、それもカフェの雰囲気作り、つまり店のインテリアだと思っている。
2018年春から始めたが、1〜2時間ほどの「ポップアップカフェ」もたまに開催していきたい。以前、ゲストを招いたトークショー形式のイベントをしていた時期もあるが、それよりももっと、くだけた、柔らかい空間だ。
さらには、もう少し企画性のあるイベントも考えていきたい。今、頭の中にあるキーワードのは、「イスラムだけでない中東」だ。「中東→イスラム教」という、やや凝り固まった発想に、違った風を吹き込みたい。具体化はこれからになる。
一方で、カフェの臨場感を可能な限り追求したい。だから、事前にシナリオを用意するのは極力避けたい。中東だろうが日本だろうが、そんなカフェにリアリティーはないからだ。脈絡のないおしゃべり、沈黙。それが「中東のカフェの臨場感」。まずこれを追求したい。
中東で何年か暮らしてきた身としては、日本はなんだかんだ言って、あわただしいと感じる。心をからっぽにしてのんびり過ごせる場所がない。特に東京などの都会では。
だから、「カフェバグダッド」は、月並みな言葉でいえば「都会のオアシス」を提供できればと思う。メニューは、トルココーヒー、カルカデ(ハイビスカスティー)あたりから始める。
トルココーヒーは、専用マシーンでいれる。本当は、火をおこして小鍋で一杯づつ作りたい気もするが、それはワンオペのカフェではちょっと難しい。
カフェを、猫でもウロチョロしていたら、のんびり感が増すかなとも思うんだけど、看板猫はいることはいるのだけど、実際の「ポップアップカフェ」に連れ出すのは多分ちょっと、難しいと思う。そこまで日本に順応していない。あくまで猫の話だけど。
最後に、「カフェバグダッド」と名前の由来について。これも以前の自己紹介文から。
このプロジェクトの着想を得たのは、イラク戦争直後のイラク首都バグダッドのカフェでのこと。「カフェバグダッド」という名には、イラクの気高きカフェ文化への敬意がこめられています。
まあ、「気高き」はちょっと気負いすぎているような気はするけれど、カフェ文化は、パリやウィーンだけでもない、とは言い切れる。