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戦争を少年の視線から描く-イラン映画「ヤドゥ」

「東京イラン映画祭」が今年も始まった。東京・港区のリーブラ・ホールを会場に、3日間で7作品が上映される。在京イラン大使館の文化部局が毎年開催しているもので、予約不要、鑑賞無料ということもあり、イランという国を映画というメディアを通じて機会として、定着してきた感がある。

初日、「ヤドゥ」という作品をみる。イラン・イラク戦争(1980-1988)をヤドゥという名の少年を主人公に描いた作品だった。開戦直後、イラン南西部の都市アバダンがイラク軍に包囲される。アバダンで母親・兄弟と暮らすヤドゥたちは、他の住民が続々と街から脱出する中、居残り続ける。さまざまな困難が降りかかる中で、事態を切り抜ける一家を時にユーモアをまじえて描く。戦争ものではあるものの、特に前半はのどかな雰囲気も漂う独特のタッチがあった。

また、ペルシャ湾の沿岸に位置するアバダンの夏の湿気と暑さが映像で巧みに表現されていて、そこでもイラン映画の伝統を感じさせる。

終盤に入って徐々にヤドゥたちの身に緊迫感が迫ってくるのだが、それでも描かれるものは、ヒューマンストーリー。ここで詳細は書きにくいが、その点もイラン映画らしいな、と感じた。イラン・イラク戦争を後世に語り継ぐ、というイランのイスラム体制の大命題を強く意識した「体制推薦作品」ではあるのだろうが、そうした匂いが鼻につくことなく、じんわり感動することができた。なんとなく選んだ、映画祭での最初の鑑賞作品だが、幸先がよいと思った。

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