トルコ南東部を行く⑥--サクサク食感、不思議なかぼちゃデザート
メインディッシュにたどり着くまでに、かなり腹がふくれてしまった。テーブルを一緒に囲んだ医師夫妻と男児は、当然、肉料理を食べるつもりのようだ。
ちなみに、私はトルコ語がほとんど話せず、夫妻は日本語を話せない。英語もあまり得意ではないらしい。結論として選択したのは、スマホのGoogle翻訳を使ったコミュニケーションだった。もどかしかったが、私の質問にひとつひとつ丁寧に答えてくれた。
メニューをみると、ケバブといっても、実にいろいろな種類がある。迷ってしまったが、やはり最初は、「普通のケバブ」を頼んで、この土地の味の基準を確認しようと思う。
普通といっていのか、わからないが、ひき肉ではない、羊正肉のケバブを頼む。肉を引き立てる、回りに添えられた野菜類が美しい。焼いたトマト、唐辛子、薄焼きのパン。理想的な組み合わせだ。肉は柔らかく、かむと、力強い羊の味が口中にじゅわっと広がる。すでにほぼ満腹だったが、夢中でほおばった。
もう何も食べられない、と思ったが、夫妻がフルーツを食べようという。サムネイルにのせたフルーツ盛りが届く。メロン、スイカ、ザクロ、ブドウといったトルコでよくみる果物に加えて、熟しきっていない感じの柿ものっている。日本的感覚では固いのだが、これはこれでおいしい。
さあ、あとはチャイを飲んで終わりかな、と思ったら、そうはならなかった。夫妻が「アンタキヤに来て、絶対食べるべきデザートがある」というのだ。
カバク・タトルスというかぼちゃを使ったお菓子。かぼちゃをクリーミーなパイやプリンにするのは世界によくあるけれど、これは、サクサクとした固めの食感がポイント。サクサク感は、石灰水に一晩漬けることでできるそう。中東料理によく使われるタヒーニ(ゴマペースト)ソースがトッピングされていた。トルコ料理というより、東南部ハタイ地方の郷土食というべきだろう。
トルコ南東部の旅の初日から、驚きと口福の連続だった。締めのチャイをいただいた頃には、夜もふけて、昼間の熱気からうって変わったような肌寒い風が吹いていた。