戦略的生き方
姉とクッキーを食べながら珈琲を飲んでいた時のこと。
姉夫婦の飼い犬(ミニチュアシュナウザー)が、姉がつまむクッキーを至近距離からずっと見つめています。
熱視線を向けられて、「ああもう、こういう時、犬ってすごく可愛い顔するんだよ」と堪えきれずに、クッキーのほんのわずかなひとかけらを、愛犬に与える姉。
すかさずそのクッキーのかすかな破片をあっという間に舐めとり、満足げに大人しく撫でられる犬。
それを見てわたしは言いました。
「すごいね。欲しい時に一番可愛い顔するのも大したもんだけど、貰った後の慎ましさもすごい。
わたしが犬だったら、与えられたそのクッキーの量に絶対納得しないよ。
『ええ?! これだけ? そっちはすごい量食べてるよね? さっきからずっと全部見てるんですけど? 体格差を考慮したとしても、あまりにこっちが少なすぎる。おかしいと思う! フェアじゃない!』
って言うね、きっと。
まあ、犬だから、『ワンワンワンワン! ワンワンワンッ!!』って吠えてるだけだろうけど」
すると姉が得意げに言いました。
「ウチの犬はね、賢いんだよ。
ほんの少しの量でも喜んで食べて、大人しくしてればまた貰えるし、可愛がって貰えるから。
ちゃんとわかってるんだよ。
うるさくワンワン訴えたら、めんどくさくてウザいバカ犬扱いされてお菓子も貰えない。
そこまでちゃんとわかってるんだよ」
なるほど!
人間に愛されるための戦略、さすがです。
おねだりする時の表情から、与えられた時の反応まで、完璧でございます。賢いわー。
まったく賢く生きられず、「めんどくさくてウザいバカ犬」の、「犬」の部分を「女」にしたのが自分だなあ、と今頃気づくわたしです。