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つまんない

子供の頃、「何して遊ぶ?」と聞くと、いつも「何でもいい」と答える子がいました。
「トランプ?」「着せ替え?」「鬼ごっこ?」
何を提案しても、その子だけはいつも「何でもいい」。

一方、子供の頃からわたしはたいてい提案する側で、みんなで相談して決定に至るのですが、遊んでいてイマイチ盛り上がらない時に、その「何でもいい」子が言うのです。

「なんか、つまんないね」

え? 
あ、す、すみません。
つまんない遊びを提案してごめんなさい……と、思いつつも、ちょっぴりモヤモヤしていた子供の頃。


10代の頃からお付き合いした彼は、デートで行く場所を決めない人でした。

わたし:「どこに行く?」
彼:「どこでもいいよ」
わたし:「何食べたい?」
彼:「何でもいい。君が食べたいもので」
わたし:「洋食と和食ならどっち気分?」
彼:「どっちもいいかも!」
わたし:「映画は?」
彼:「いいね、映画! ホントに何でもいいよ」

という感じで、主導権はいつもわたし。
顔が好みでいつもこちらに合わせてくれるところが優しいとか思っちゃって大好きだったけれど、彼自身の意見が常に謎。
で、結局最後の最後で「一緒にいてもつまんない」という衝撃の、唯一の「彼の意見」を宣告されてフラれたわたし。

「つまんない」って何よ!
古い記憶が蘇ってにわかに興奮気味になりますが、確かにそんな相手をいつまでも(ほんとうにいつまでも)好きでいたわたし、相当つまんない人間です。
実際つまんなかったのも確かでしょう。
すべての別れる理由は、「一緒にいてもつまんない」に尽きるものです。
でもこちらに言わせれば、自分の意見を言わない、決めない人の方がよほど「つまんない」と思うけど?
誰かに楽しませてもらおうという傲慢さが、「つまんない」の原因だと思うけど?

ところが、つまんなくてもモテるんです。
「何でもいい」と繰り返し、自分の意見を言わずに、あらゆる方面からの好感を得られる態度をする人は、嫌われません。
本音を言わない、波風立てない、人に合わせる無難なタイプは多くの人から好かれます。
見た目が良ければなおのこと。
だけど、だいたいイケメンってたいてい話はつまんないです。
すみません、恨みつらみの個人的偏見です。

さて現在。
今のわたしの周囲には、自分の意見をハッキリ言う人ばかりです。
波風立てても、敵を作っても、毒づいても、本音で話す人は面白い。
「どう思われようとも、自分は自分」というスタンスが、骨があってたいへん魅力的です。
何より、自分で決めた責任と覚悟があるから、人のせいにしたりしません。
noteにも、そういうハッキリした方々が多くて本当に清々しいです。
そして、そういうハッキリした人の方が、誰かに面と向かって「つまんない」なんて言わないんです。

あ。
でも、当店は、自分の意見を言う人も、言わない人も大歓迎。
つまんない人も、面白い人も、モテる人もフラれた人も、どうぞ当店にてゆったりとしたひと時を。
あらゆる方面からの好感を得て多くの人に受け入れられようとする、つまんない店主です。

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