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【創作落語】はたらく意味
「お父ちゃん、「はたらく」ってどんな字かくの?」
「おお、宿題してんのか?エライじゃないか。「働く」ってのはな、人が動くと書くんだよ」
「人がうごくと「はたらく」ってことなの?」
「そうだよ。人が動いているときは何かしら仕事しているだろう?」
「お父ちゃんが夜にコソコソうごいてスナックに行くのは「はたらく」ってことなの?」
「人をゴキ○リみたいにいうんじゃない。母ちゃんには言うなよ」
「うごくってどんな字だっけ?」
「しょうがないやつだな。お前が使っている辞書をもってこい」
「はい、これ」
「どこのだ?三省堂か?」
「反省堂」
「ずいぶん自己肯定感の低い辞書だな。まあいいや、見せてみろ。はたらく・・はた・・、あったこれだ!」
「あ、これか。この字なら見たことある」
「まあ、そういうもんだ。どうせだから正しい意味も覚えとくといい」
【働く】
1 仕事をする。労働する。特に職業として、あるいは生計を維持するために、一定の職に就く。
「なあ、働くってのは大変なことなんだよ」
「うちはギリ生計を維持しているから、ギリ働いているってことだね」
「余計なこと言わなくていいんだよ。しかし、この辞書ではとなりに他の漢字も書いてあるな」
【傍楽(はたらく)】
1 はたらくとは、周りにいる人を楽にさせるということ
「たしかに。うまいこと言うねぇ」
「どういうこと?」
「例えばだな、お父ちゃんがお店でご飯を作ってるだろ?そうするとそれを食べにくる人は自分でご飯を作らなくていいじゃないか。楽をさせてもらえた代わりに、「ありがとう」ってお金を払ってくれるわけだ」
「たまにしょっぱいって怒られてるけどね」
「いちいち・・」
「でも、「お代」っていうのは「楽をさせてもらった代わり」って意味なんだ」
「そういうことだ。お、もうひとつ意味が書いてあるぞ」
【傍楽(はたらく)】
2 はたらくとは、周りにいる人を楽しくさせること
「いいこと言うじゃないか。お前も覚えとけよ、みんな仕事がイヤだイヤだって言ってるけど、それは「働く」とこばっかりに目がいってるからだ。周りの人が楽しんでくれたら嫌でもなんでもないだろ?」
「たしかに、お父ちゃんはいつもお店でお客さんと笑っているもんね」
「おまえも大人になったら、お父ちゃんのような働き方をするといい」
「あたしゃ、苦労ばっかりでちっとも楽させてもらってないけどね!」
「か、母ちゃん!」