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親が親である限り子は子である

例え親子であってもお互いの考えが全てわかるはずなどなく、理解し合えるわけでもない。

まして男同士同じ商売をしていれば余計に意見は食い違うもの。

でもそれって当たり前のことで、むしろそうあるべきなんじゃないかな。

そう思うのであります。


いや〜、今日も朝から親父と揉めました。

というか、今日ばかりは僕も言わずにはいられなかっといったほうが正しいかもしれません。



はじめましての方に説明させていただきますと、僕は両親と3人で(営業中はパートさんも)和食の店をしています。

主に宴会でのご利用が多いので、コロナ禍の現在はまさにその煽りを食っている状況にあります。

来年から店の経営が親父から僕へと譲渡される予定となってまして、現在は立場上はまだ親父が経営者、そして僕が現場の責任者といった感じでやっております。



さて、話を戻しますと、今日の揉め事の原因は(といってもいつものことですが)僕が仕入れから帰ってきた時の、親父からの「もっと在庫見て買ってこいよ」というひと言が火種となりました。


元々親父は「在庫はなければないほどいい」という考え方の人間で、それはもちろん僕も理解しています。

一方で僕は「予約が急に入ってきても対応できるように、また値の張る食材が安く買えた時はいつかのためにストックしておくべきだ」と考えるタイプです。

そこで毎回「在庫を見ろ!」「じゃあ急に今日予約が入ったらどうするんだ?」と揉めるわけですね。


このように我が家ではお互いにスタートの時点ですでに見ている方向が違っているのですからそもそも意見など合うはずがないのです(笑)

原因は明確で、「僕はまだ親から給料をもらう立場であること」、そして「大まかな経費と売り上げしか把握していないこと」が理由です。

つまりまだ経営者として全てのお金の流れを理解していないのです。

でもそれは無理もないんです。

うちは自営業なので、純利益までを把握しようとすると、親の貯蓄や住宅の返済、リース料、保険料など、かなりプライベートな部分のお金の出入りまで把握しなくてはいけないので親も当然全てを話したがりません。

親父も親父で現場、つまり市場の入荷状況や最近の相場を見ていないくせに、僕が買ってきた食材のみを判断材料に高いだの安いだの多いだの余計だのと言っているわけです。

これではおつかいに行かせた子供に「なんでそんなの買ってくるんだ」と説教しているようなものです。


僕も日頃はグッと堪えてはいますが、さすがに今日はひと言言わせてもらいました。

だって僕だって何も意図もなく買ってきてるわけじゃありませんから。

そこら辺はご理解いただきたいわけです。


しかし、ここでネックになってくるのが「親子」という関係性です。

しかも男同士となるとなかなか素直に相手の言うことを飲み込めません。

頭ではわかっていても認めたくないのです(笑)

子は一人前という自負から強気に出ますし、親もまだまだ子供には負けてられないとか、転ばぬ先の杖でついつい口出しが多くなってしまいます。


こうなってはもはや間に永世中立国である母親をたてて議論をぶつけ合うしかすべがありません。


母は母で立場上なかなかはっきりと白黒つけることは難しく、お互いの意見の違いを伝えるくらいことしかできません。


結論としてはそれが男同士であり、板前というものなのだと思います。

お互いが同じ船に乗って一方しか見ていなかったら、万が一海賊が来たり、氷山に近づいたとしても気づかないかもしれません。

お互いに「うん、そうだよね!いいねいいね!」ばかりでは味や献立も一辺倒になる恐れがあります。


だからお互いを常に「それでいいのか?」と監視することで、より多角的に店のことを捉えられるようになると思うのです。

だから意見が対立することは決して悪いことだとは僕は思っていません。


そもそも男同士で仲良くしてたら気持ち悪いっていうのもありますけどね(笑)


話をまとめると、例えば血の繋がった親子と言えど、男同士お互いに本気で仕事に向き合っていれば当然それぞれの自論が生まれ、間には相応の衝突が生まれてしかるべきです。

そこで大事なのはそれを無理に交わろうとせず、ちゃんとお互いの立場になって、建設的に物事を議論するようにすべきなのです。

「なぜ親父はそう言うのだろうか?」とか、

「なぜあいつはオレの言うことがわからないのか?」といった具合に。


否定して終わるのではなく、相手の意見をちゃんと飲み込むまで話し合う。

そしてそれをお互いの現場で行わなければ、いつまで経っても話は平行線のままだということ。

二人でひとつの被写体を見ているようで、実は立場が違えばそのアングルは全く別のところにフォーカスしているのです。


今日は朝から非常にぐったりしましたが、この先も一緒に商売をする以上、角度は別でもピントだけは同じところに合わせていたいと思った一日だったのでした。


親はいつまで経っても親のままですし、子は子のままなんですよね。

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高橋 優介@越後妻有の料理人タカハシ
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