片想い
満月が浮かんでいる。
まるで人工的に造られたかのような、美しく神々しい、見事な球体。
人はいつの時代も、月に憧れを抱く。
しかし今、私は暗闇の中にいる。
漆黒の暗闇。
上を向けば薄らと光が見えるが、下を向いても底は見えない。
何処までも、底の知れない暗闇。
光の方に行こうともがく。
一瞬、浮上出来そうな気がした。
届きそうな、光。
月光に向かって、私はもがく。
だが、もがいても、もがいても、体を動かす程に底へ沈み、月の光から遠退いてゆく。
いつしか闇すら見えなくなり、そこに在るのは「無」だ。ただ「無」だけがそこに在る。
次にあの満月を見ることが出来るのは、一体いつになるのだろうか。
月光を浴びることが出来る日は、再び来るのだろうか。
「無」の中で、思念だけが漂い続けていた。