婚約者の友人をみました
先日知人と会った時に、「あなたって変な映画観てるのね。Facebookで急にいいねされたからびっくりしちゃった」と言われた。わたしとしては変な映画を観ているつもりはなかったのだけど、その映画が『婚約者の友人』だったのだ。この映画を観たのは年末なのでもう半年以上前のことになるけれど、当時の記憶とメモを頼りに少しこの映画について書いてみようかな。(観直してみて記憶違いの部分があったらあとでこっそり直します…)
婚約者の友人はフランソワ・オゾン監督の映画で、この映画のTwitterアカウントによるとモノクロ×カラーの映像美が仕掛ける頭脳と心を揺さぶる極上ミステリーらしい。ある日アンナの婚約者フランツの墓の前で泣いていた謎の男、アドリアン。フランツの友人と名乗る男はなぜ彼女の前に現れたのか。フランツとアドリアンは一体どういう関係なのか。フランツの秘密が明かされたとき、彼女は…。
わたしがこの映画で一番印象に残っているのはアドリアンの髭だった。全然ストーリーに関係ないところで申し訳ないけれど、わたしは彼の髭が気になってしょうがなかった。まあそれはいいとして。
この映画はモノクロとカラーが入り混じっていて、それが魅力のひとつだと思う。基本的にはモノクロの映像だけど、確かアドリアンがフランツの思い出を語るときにカラーになっていた。その色彩の対比によって、フランツとアドリアンの思い出は鮮明で美しくて、アンナやアドリアンが生きているモノクロの現在に対して夢のような光景に映った。実際にそれは夢なのだけど。
この映画の前半は戦後ドイツが敵国のフランス人を憎む姿がよく出てきて、フランツの父も最初はフランス人のアドリアンを受け入れようとはしなかった。フランス人のアドリアンにとって、戦後のドイツに一人でやってくることは敵しかいない土地に来るということなのだ。そんな土地にわざわざやってくるなんて、フランツの家族に会うということはがアドリアンにとってどれだけ重要なことだったかがわかるような気がする。
アドリアンがアンナに秘密を告白するシーン。突然アンナたちの元を去ったアドリアン。自殺を試みるアンナ。アドリアンからの手紙。宛先不明で戻ってきたアドリアンへの手紙。アンナはパリへと旅立つ。フランツが好きなパリ。フランツと新婚旅行で行くはずだったパリ。
彼の秘密を知ってしまってもアドリアンに惹かれるアンナと罪の意識を感じているのにアンナに惹かれるアドリアン。ラストのルーブル美術館でマネの絵を見ているシーンが忘れられない。あのアンナの表情が忘れられない。フランツが愛した絵。それはきっと嘘でアドリアンが愛した絵。あの絵がアンナとフランツを、アドリアンとアンナを繋ぐ絆のようなものなのかもしれない。