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令和の米不足の実際を分かりやすく解説

最近、「米不足」というワードをよく耳にします。
ですがそれは実態に合った表現とは決して言えないと筆者は考えます。
今回はその理由と、広まっているデマについて解説していきます。

代わりの表現としては「米が足りないように見える事態」「品薄(物はあるけど商品が少ない)」はどうでしょう。

米が足りないように見える「最大の理由」

実は米の量自体は足りているのです。
在庫率で見れば平成23年、24年と同水準です。
また、新米の出回りも既に始まっており、今後順次回復すると考えられます。
全体的にはひっ迫状況にありません。

では、何故「米不足」と騒がれる事態へとなったのでしょうか?

「買いだめ」ムードがあった

先日の台風10号、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の発表などの災害が発生した事が大きな理由と言えます。
災害に備えた「買いだめ」の動きがいつも以上となったと言えます。
どちらか片方がなければ状況は大きく違っているでしょう。

そもそも8月は米の在庫量が最も少ない時期

8月は米の在庫量が最も少なくなる時期であり、それも理由になったと考えられます。
そのような時期に買いだめの動きとなればどうなるかは明らかです。

お盆休みは物流が停滞しがち

色々タイミングが悪かった感じですね。

ちなみに今年の作柄はこんな感じ

今年の米の作柄(農作物の生育や収穫高の状況のこと)は43都道府県で「平年並み」以上となりました。
詳細は下の図のようになり、調査対象は46都道府県です。

これらについて与党の自民党が原因との声もありますが、どのような政党が政権であっても、米の在庫量が8月に最も少なくなりますし、台風などの災害を止める事もできません。
政党という存在に夢を見過ぎです。

出典 令和6年産水稲の8月15日現在における作柄概況

備蓄米の放出に政府が慎重な「これだけの」理由

足りている状況で放出=価格暴落のおそれ

備蓄米を放出すれば良いという話を耳にしますが、筆者は政府と同じ意見です。
そもそも米の在庫量は足りている状況です。そんな中で備蓄米を放出してしまうと新米を含めた米の価格暴落を招く可能性があります。

そうなれば大変まずい事になるには明白です。

備蓄米を備える目的というのは…

そもそも備蓄米は不作など、供給が年間を通して不足する事態に備えている物であり、今回のような短期的な物では慎重な判断が必要となります。
「冷静な対応」は我々だけでなく政府も取る必要があるのです。

そもそも食糧法に…

食糧法第2条を見てみましょう。

政府は、米穀の需給及び価格の安定を図るため、米穀の需給の適確な見通しを策定し、これに基づき、整合性をもって、米穀の需給の均衡を図るための生産調整の円滑な推進、米穀の供給が不足する事態に備えた備蓄の機動的な運営及び消費者が必要とする米穀の適正かつ円滑な流通の確保を図るとともに、米穀の適切な買入れ、輸入及び売渡しを行うものとする。

食糧法第2条

備蓄の事に関する記述があります。そして食糧法第3条を見てみましょう。

この法律において「米穀の備蓄」とは、米穀の生産量の減少によりその供給が不足する事態に備え、必要な数量の米穀を在庫として保有することをいう。

食糧法第3条

供給が不足する事態に備えている物をそうではない「今」放出すると、食糧法の解釈が変わってきてしまいます。
これもまた、慎重な理由の一つかもしれません。

減反政策と絡めたデマにご注意

減反政策は2018年に終了しています。
今になっても減反政策云々で批判する人は2018年以前から突然こちらにやってきた人か減反政策に興味がなく、終了自体を知らなかった人かどちらでしょう。

現在では、行政による生産数量目標の配分が廃止され、個人で自由に調整ができるようになっています。

ですが、一気にたくさん生産すると、先程言ったように価格暴落を招くので「今年はこれくらい必要となりそうだよ。」という目安が各都道府県ごとで設定されています。
これはあくまで参考であり、判断は生産者個人です。

国の調整が無くなった事で自由度は高まっている形になっているのですが…
それでもまだ「減反政策は続いている。」と言う人がいます。言い訳もほどほどに。

合わせて知りたい!米の価格上昇にある背景

米の価格が上昇していますが、農家からは生産資材の価格高騰などによる生産コストの増加を価格に反映できたとの声もあります。

要はようやく生産を続けていく事ができるレベルに達しつつあるという訳です。

これまではそれができているとは言えない状況だったため、今年1月から8月までのコメ農家の倒産件数は34件と、このままでは年間の倒産件数が過去最多を記録する勢いです。

出典 日本農業新聞 米農家の倒産・廃業 24年 進まぬ価格転嫁、経営圧迫

そのため、農協(JA)などが農家に前払いする概算金の水準も上昇しています。

米の価格の上昇にはこのような背景もある事に注意しましょう。
高いのはキツイかもしれませんが、農家の事情も理解していただけるとありがたいです。

批判も正当な内容ならいいのだけど…

農林水産省の職員が出演する公式YouTubeチャンネル「BUZZ MAFF(ばずまふ)」で公開されたショート動画が批判を浴びているそうです。

これは農水省の職員が出演する動画チャンネルで、消費者に安心してもらうため、新米の収穫が進んでいる状況を伝えている。しかしSNSでは(中略)批判的な声が相次いだ。

出典 FNNプライムオンライン 農水省職員出演の“コメ収穫”動画に批判相次ぐ…坂本農水相「早晩にコメ不足解消」発言も終わらぬ“令和の米騒動” 「カレーライス」も危機

実際の動画を見ましたが、「コメント欄自体は」そこまで批判的な声が多いとは言えませんでした。

別に批判自体は正当な内容であればOKだと思いますが、一部の「批判」を見ていると、「これは言いがかりと同じだよね…」と思わず口に出してしまうような内容もありました。
批判するにしてもまずは正しい知識をある程度身につけてからすべきではないでしょうか?

おまけ ちょっとした勘違いを

「新米のPRより米不足をどうにかしろ」
→米の品薄を解消するのは備蓄米ではなく新米です。もうすぐ新米が本格的に出回りますので安心して、それまでは冷静な対応をお願いします。

「今無いのに先を見据えた話をするのはズレている」
→仮に備蓄米を放出しても今すぐ手に入る訳ではなく、新米が出回る方が早い可能性もあります。
また、新米の収穫・流通自体はリアルタイムの出来事です。

筆者がみんなに求めること

・買い占めない

無理にたくさん買っても食べ切れません。それに新米が出荷される時期が来ています。
食べ切れる量、必要な量だけを買いましょう。

・不安を煽らずデマを流さない

デマが大変な事態のトリガーになるケースが多数あります。
冗談レベルの内容が冗談で済まない事態になってもおかしくはありません。

・調べて話す

減反政策の件もですが、(言うまでもなく)調べずに話してはいけません。

・転売ヤーから買ってはいけないし転売ヤーになってもいけない

これは言わずもがな。

各自、安心して、冷静な対応をお願いします。

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