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通院日記 - 退院後初の通院

退院すると世間はすっかり夏になっていた。
ヘモグロビン値は10まで上がり、それまでは6分ほどの道程を休憩しつつ20分かけて通院していたのだが、なんら問題なくGoogle Mapの予想時間通りに到着できた。

診察室へ

まず主治医のお医者様にとても心配された。
消化管からの出血を疑ってらした様子で、ヘモグロビン2.4という数値にも驚いていらっしゃった。
何より問題だったのが、これが自傷瀉血の末の貧血だったということだ。
この日の診察では、入院時の状況、自傷について話すことに終始した。

瀉血の自傷跡は小さい。
「傷を見せてください」と言われ、少しためらいながら見せた自傷跡はほとんどわからないようなものだった。
「ここまであなたが追い詰められているとは思いませんでした」
悔しそうにつぶやいたお医者様の顔が印象に残っている。

こころの救いになるものを

「退院後はどう過ごしていますか?」
この質問に少し逡巡した。
できることなら精神科でもいいからまた入院したいという気持ちがあったからだ。
「入院中は人の気配が常にしていて安心した。家でも音楽や映画を流して音を絶やさないようにしている」と、ありのままを答えた。
その後どんな音楽が好きか、どんな映画を観たか、という質問を受けた。
私の話す音楽家や映画監督について、お医者様はよくご存知だった。
音楽や映画について話している時間は楽しく、少し笑いが溢れることもあった。
「こういったものがあなたの心を慰めてくれるはずです。良い作品に触れてください」
おおよそこのようなことを言われたと思う。
芸術に関して造詣が深い先生なんだな、と感じた。
好きなものを肯定されたようで、なんだかとても嬉しかった。

今回の診察で初めて抜け落ちた言葉

いつもお医者様は診察の最後に「お薬に対する要望はありますか?」とおっしゃる。
あるにはあるものの、通院仕立てであれこれ注文をつけるのも憚られ、いつもありません、と返していた。
今回はそのお薬に対する要望を聞かれなかった。
入院時の顛末と、その後の生活のことで診察時間が押していたからか。
効かれていたら、リボトリールを0.5mgから1mgの増量を要求していたと思う。
今までの病院ではずっと1mgで処方されていたため、0.5mgでは不安を抑える効果が心もとない。
特に退院後の虚しい気持ちを抱える今ならなおさらだ。

次回の診察は2週間後。
そこで自分が言い出せるかはわからない。
ただこの不安感を抱えて生活するのも息苦しい。
勇気を出して言い出すタイミングがきたのかもしれない。

病院からの帰り道にて

病院の近くには小さなスーパーがある。
これまでは病院の行き帰りにも休憩が必要なほどで、とてもこのスーパーに寄って帰ろうなどという気持ちは湧き上がらなかった。
しかし、体調が改善した今、食材の買い込みに少し寄ってみようという気になれた。

久しぶりのスーパーは、なんてことない田舎町の店なのに妙にキラキラして見えた。
気分が高揚して、次から次へと食べたかったものをカゴに詰めた。
重い荷物を抱えて帰る道のりは病み上がりの体にはしんどい。
ただ、また生活が続いていくんだと少し前向きな気持ちが生まれていた。

今回の処方

 朝:アロチノロール塩酸塩5mg×1
   セルトラリン25mg×1
   ランドセン0.5mg×1
 夕:アロチノロール塩酸塩5mg×1
就薬:マイスリー10mg×1
   サイレース2mg×1
   インチュニブ3mg×1

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mari
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