「フルメタル・パニック!Family2」が発売。エンタメで再び得た楽しみと活力。
11月20日に自動配信された「Family2」
1冊のライトノベルが発売日を迎え、Kindleに自動配信された。『フルメタル・パニック!Family2』だ。通勤前にアプリで確認した私は、思わず心が躍った。
『フルメタル・パニック!(略称:フルメタ)』とは、平凡な高校生活を送るヒロインと、彼女を護衛する少年傭兵によって繰り広げられる物語だ。近未来的なミリタリー要素やハイテクロボット「アーム・スレイブ」が登場し、シリアスな「長編」とコミカルな「短編」という二面性が特徴のラノベシリーズである。
一方で、完結から20年後を描く続編『Family』は、連なる短編によって物語が進んでいく。夫婦となった主人公たちに加えて、彼らの子ども2人が登場し、銃火器やアーム・スレイブを駆使するアクションが随所に散りばめられている。キャラクターイラストも魅力的だ。
初刊は26年も前になる作品だが、私は今年になって初めて触れた「新参者」である。
▼新刊の「Family2」
▼前巻の「Family」
「学園モノ」が高校時代の私を救った
私は高校入学とともに他県から山口へ引っ越した。しかし、かつて住んでいた地域とは異なる雰囲気にどうしても馴染めず、高校の3年間は暗い日々を過ごす。
その反動からか『うる星やつら』や『らんま1/2』といった学園モノの作品に夢中になった。今思えば「変なキャラでも受け入れられる多様性のある世界観」に惹かれたのだと思う。
プレイバイメールが原作のライトノベル『蓬莱学園』シリーズも、その1つだった。10万人が孤島で暮らす何でもありの学園モノで、長編と複数の作家が描く短編集が並行して展開され、こちらはリアルタイムで読んだ。
短編の中で特に私を魅了したのが、フルメタの作者が描くデビュー作だ。テキストだけで鮮やかに情景を描き、ユーモアと緊張感を織り交ぜたその文体は、私にとって本当に衝撃的だった。
その後、この作者は『フルメタル・パニック!』を描き始める。作品は大ヒットし、映像化もされたらしいが、私はその頃すでにラノベから離れ、バイクなどに興味が移っていた。
▼旧シリーズ「長編」全12巻
久々のラノベ読書が再び心の支えに
今年の初頭、偶然Amazonで見かけた『フルメタル・パニック! Family』がきっかけで、旧作シリーズを読み始めた。長編、短編、外伝を合わせて全24冊。睡眠時間を削りながら一気に読破してしまった。
その頃の私は、本業の転属先で全く慣れない業務に苦しみ、憂鬱な毎日を過ごしていた。職場のストレスチェックでは「高ストレス者」に該当するほど、気力も尽きかけていた。ライターとしての活動も多忙を極める。
そんな中、フルメタは心の支えになった。スリリングな長編やユーモアに富んだ短編集は、荒んだ心を癒してくれた。一時的な「現実逃避」かもしれないが、この年齢になって同シリーズを手に取ったのは、私にとってある種の「必然」だったのだと思う。
「エンタメ作品は人を生かす力がある」と強く実感するとともに、私も「誰かの役に立つライターを目指したい」と、改めて思うようになった。
▼旧シリーズ「短編集」全9巻
40代のライターが得た新たな楽しみ
前巻『Family』では、旧シリーズ完結後の彼らの姿が描かれた。
中でも、主人公と元生徒会長の再会シーンが印象的だった。私自身、小中学校の同級生とは30年以上会っておらず、氷河期世代の彼らが歩むそれぞれの人生に、読みながら思いを巡らせた。
今回の『Family2』では、前作のキャラクターたちとの再会とともに、子ども2人を中心にその関係性や騒動が描かれる。続きを読むのが惜しくてゆっくり読み進めたが、いくつか気になる伏線も出てきた。「Vチューバー」や「バ美肉」といった、今どきの用語も出てきて面白い。
あとがきでは次巻の刊行が予告され、さらにコミカライズ化も発表された。
ここまで「続きが待ち遠しい」と思える作品に出会えたのは、本当に久しぶりのことだ。この年齢になって、再びワクワクを感じられる新たな楽しみができたことが、純粋に嬉しい。
次巻の刊行までは、おそらく1年ほどかかるだろう。その間、普段の読書に他のラノベを添えながら、気長に待ちたいと思う。
この楽しみが続いていくことが、今の私にとって何よりの心の栄養だ。
▼旧シリーズ「外伝」全2巻+α
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