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"女性が好きそうな味"理論


もう多分10年くらい前のメディアの話だが、
テレビ番組の食レポでよく聞く言葉があった。


「女性が好きそうな味ですね。」


野菜をふんだんに使ったヘルシーな料理や、和食など、いかにも健康的で薄味そうなものを食べた後、レポーターがお決まりのように発していた言葉だ。


当時中学~高校生の私はこう思っていた。

「"女性=ヘルシーなものが好き"なんて、
 勝手なイメージは大概にしろよ?」


私は、ヘルシーのアンチだった。
食べ物は、カロリーが高く背徳感があるほど、満足感が味わえるものだと思っていたので。
そんなギルティなものを苦手とし、草しか食べないような人間を=(イコール)女性とする、世間の風潮って何だよマジで、と内心ブチぎれていた。


でも大人になった今、意見は割とガラリと変わった。

「うん、(ヘルシーな食べ物)意外と好きよ。」

この間なんて、わざわざ足を運んでサラダボウルなんて食べに行ってしまったくらいだ。
10年前くらいの自分がそれを知ったら、ドン引きするに違いない。


この変化は”いつ”、”どのように”起こったのか。
私の考える説をここで提唱することにする。


まず、”いつ”の部分だが、私が思うに「ダイエット」がターニングポイントだと思う。

私の初ダイエットは高校2年生の時だった。


「高校生の時が、人生一番のピーク体重でした」という女性は多いのではないかと思う。

中学生までは校則で禁止されていた買い食いが出来るようになったり、校内に購買という魅力的なシステムが出現したり、はたまた背伸びしてスタバでフラペチーノを飲んでみたり、何かと食に対して羽を伸ばしてしまうのが、高校生という時期なんだと思う。

一方、女性の代謝のピークは12~14歳と言われている。
中学生の頃と同じペースで食べ続けたら、太るのは当然のことであった。
なんなら中学生の時よりも食への執着は強まるばかりだ。

食べたい盛りと代謝の低下開始の均衡点がちょうど高校生。
華のJKなんて言いながら、もれなく女子全員太る呪いにかけられるなんて、鬼畜すぎるタイミングの悪さである。

私は例に漏れず、上記の魅力にまんまと吸い寄せられ、見事に蓄えていった。

そして、甘いものが大好きな私は、さらに追い打ちをかけるように肌荒れにも悩まされた。(時期的な理由もあるだろうが。)


太って、肌も荒れて気分は最悪。
ダイエットを決意せざるを得なかった。


ダイエットの方法は、単純に食事の量を減らしたり、いかにも太りそうな食べ物を控えたりと、食で調整していた。+日々の部活動。

最初はジャンキーな味が恋しくてたまらなかったが、意外と意志は固く、健康的な食生活を続けた。


しばらくジャンキー断ちすると、驚くことに次第に味覚に変化が出てくる。


無駄食いをしなくなるので、毎回毎回の食事を味わって食べようと思う。
例えそれが質素な食事でも。


今までそんなに好んで食べなかったかぼちゃの煮物は甘くてデザートのように感じるし、おからやひじきは”体にいいものを食べている感”=”いいことしてる感”になり、前より食べることが楽しくなった。

”どのように”の部分は、まさに上記が表していることだ。

ダイエットにより健康的な食事を意識的に摂ることで、今まで物足りなさを感じていた食品や味付けに、新たな美味しさを見出すことが出来たのだと思う。
まさに味覚革命が起き始めていたのだった。


一方で、男性で高校生の時にダイエットをしていたという話は、女性よりかは聞かない。
寧ろ、なんでそんなに食べてるのに太らないんだよ、と男性の代謝の良さをうらやましく思うことの方が多かった。

人にもよるだろうが、代謝や筋肉量の関係で、女性よりかは太りにくい体質の男性は、わざわざヘルシーなものを若い頃から選んで食べることは少ないと思う。
年を重ねるとそんなことないかと思うが、高校生~20代中盤くらいの男性は、少なくともそんな傾向にはあると思っている。

ここで男女間に味覚の差が生まれ、いかにも健康的で薄味そうな食べ物を見て「女性が好きそうな味」となるのだと思う。
男性が味覚に鈍感だと言いたいのではなく、多くの女性が対面する高校生太り→ダイエット→健康的な食事 という流れが、この印象を強めていると私は認識している。


「女性が好きそうな味」という言葉は耳にタコができるくらい聞いて、内心「もういいよ…」と飽き飽きしていた。
人の言葉をそのまま使い回すのはナンセンスだと思うが、この味覚の変化を自ら経験すると、「女性が好きそうな味」という言葉に、前よりも納得が出来るようになった。


とはいえ、マクドナルドのポテトだって、甘すぎてえずきそうなアメリカ仕込みのクッキーだって、今なお大好物である。

ヘルシーもギルティも好き。

この経験を経て、おいしいと思えるものの幅が増えたのは良い収穫だ。


ちなみに、ベーグルのサンドイッチがいただける場所でこれを書いているのだが、今まさに隣のカップルがこんな会話を繰り広げていた。

彼氏「ベーグルってどこがいいの。もっと味濃いもの食いたいんだけど。」

彼女「この素朴な味がいいんでしょ!」

彼氏「へー…(無関心)」


これは味覚の問題以前に、二人の関係性の方が気になってしまう気もするが。
ベーグル専門店でベーグルの文句を垂れ流す男も男だし、ある程度の付き合いがあれば相手の食の好みだって分かるだろうに、わざわざ連れてきた女も女だと思う。(まあそれはさておき)


ヘルシーアンチだった私。
味覚とか考え方って、ガラリと変わってしまうんだなと思うのであった。

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