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びゃくさい
2021年6月27日 12:27
-1-「こりゃしばらく止みそうにないな……」花岡啓太(はなおか けいた)は、少し空を見上げるようにしながら言った。大粒の雨が、木々を何度も俯かせ、大きな音を立てている。下が土だから、地面で弾けるような音はせず、アスファルトが濡れるニオイもしないが、濡れた草木が放つ、独特のニオイが鼻を撫でる。「まあ、まだ3時前だ。 休みながら、のんびり止むのを待とうぜ」 梨本清春(なしもと
2021年6月19日 22:00
-1-谷「それでは新村さん、よろしくお願いします」インタビュアーの谷に言われて、新村寛(にいむら かん)は、静かに頷いた。和食レストラン残響。和食をベースしているため、そう言われているが、実際には、オーナーの新村の創作料理に近い。ジャンル新村というのが、一番しっくりくるかもしれない。斬新で、常識を軽々と超えてくる料理の数々に、人々は魅了され、雑誌にも度々紹介され、店内は常に混み
2020年10月26日 19:03
-1-ようやく、ここまで来た。今まで俺を見下した奴ら、今の俺を見たら、全員が手のひらを返すだろう。当然だ。連中が一生かかって稼ぐより、はるかに多い金を、俺はもう手に入れた。もう誰にも、馬鹿にさせない・・・「・・・!」目を覚ますと、白い天井と壁が視界に飛び込んできた。夢・・・いや、夢というより、過去と言ったほうがいいだろう。今、夢の中で自分が言っていたことは、20年以上
2020年8月24日 22:07
第一章:火葬場跡にて-1-「よし、着いたぞ」光川隆一(みつかわ りゅういち)は、好奇心を抑えきれないといった顔で言った。ローカルな心霊スポットを紹介する。大学の同期生である、光川隆一(みつかわ りゅういち)とその友人、増田、木田、水野の四人は、そのコンセプトで動画を作り、動画配信サイトにアップするために、地元でしか知られていない心霊スポットにやってきていた。「カメラの準備はで