子どもの身体性を発揮させるデザイン
子ども ( 特に幼児期 ) にとっての遊びは、エンターテイメントとしてだけでなく、身体や心の基礎能力を向上させる上でとても大事な要素です。
身体能力の向上、というとイメージとして外遊びが主戦場だとは思いますが、最近では、猛暑や大気汚染等、環境的にネガティブな要因も多く、外遊びをさせにくくなった、という家庭も増えてきたのかな...と感じます。
そんな背景もあり、天候や季節に関わらずに遊べるインドアプレイグラウンドの重要性も増していくのではないかと思いますし、インドアの企画をする事の多い私たちのようなデジタルアトラクションの作り手も、エンターテイメント性だけでなく、その中に子どもたちの身体を育む要素を折りこんでいく事を日頃から意識しておくことが大切だなと考えています。
動作を導く文脈の設定
屋外に比べて、利用できるスペースが限られているインドアプレイグラウンドの中で、子どもたちの身体性を効率よく引き出すコンテンツを作るためには、「遊びの文脈」を設定するという視点が重要であると考えています。
インドアプレイグラウンドの代表的なコンテンツとして、大きなボールプールエリアがよく設置されています。たくさんのボールが存在しているので「投げる」という動作が導かれるように期待をしてしまいますが、遊んでいる子どもたちを、じっくり観察してみると意外に「投げる」という動作が少ない事が分かると思います。
これはボールプールというコンテンツ自体に、明確な遊び方の規定がない分、子どもたちが自由に遊び方を考えていて、動作の種類が多くなっているためです。
しかし、エリアのどこかに明確な「的」がデザインされていれば、子どもたちは積極的にボールを投げるようになります。ボールと的の間の関係性から、その場に「投げる」という動作が生まれる、これが「遊びの文脈」です。
以前実施した例ですが、ボールを壁になげるとカラフルなペンキのエフェクトが飛び散る「ポイポイペンキ」というコンテンツは、「壁にボールが当たるとインタラクションが発生する」という文脈が設定されています。とてもシンプルなコンテンツではありますが、参加する子どもたちの多くが、夢中でボールを投げて遊んでいます。
「ジャンプ」という動作を導きたければ、反発性の高いトランポリンのようなマットを設置して、天井から色んなオブジェクトを吊るしておけば、子どもたちはより高いオブジェクトに触れようと、めいっぱいジャンプしてくれるでしょう。
こういった「動作を導く」という視点で遊びの文脈を考えていく事で、子どもたちの身体性を発揮させるコンテンツを作りやすくなります。
動作を許容する環境づくり
また、遊びの文脈と同時に重要になってくるのが、動作を許容する環境の設定です。身体性を発揮させる遊びを考えると、大きな動作が必要になることが多くなります。動作が大きくなると、必然的に周りや自分に及ぼす影響も大きくなるので、それを許容する環境の整備が必要になります。
デジタルコンテンツでいえば、壁面をタッチスクリーンにして、壁に投影されている映像にタッチすると、インタラクションが発生するというコンテンツがあった場合、ここで導かれる動作は「触る」であったり、さらに動作が大きくなっても「叩く」くらいになると思います。これはインターフェースとなる壁面が硬いため、壁面をタッチするという文脈が出来ていても、許容されている動作の限界値が暗黙的に設定されている事が原因です。例えばこのインターフェースである「壁」の素材をやわらかい「マット」のような素材にすれば、動作の許容量が大きくなり、「体当たり」や「パンチ・キック」など、より大きな動作に変化していきます。
こちらも以前実施したものですが、壁面に触れるとマンガのような効果が発生する「オノマット・ペー」というコンテンツでは、上に挙げた通り、プロジェクションされる壁一面にマット素材を採用することで、同種のコンテンツに比べて飛躍的に大きな動作がとれるように設定しました。
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外遊びに比べて、スペース的な制約が多いインドアプレイグラウンドですが、こういった視点をもって制作する事で、さまざまな動作を導く事が可能になります。( 壁面をマット素材にするなどの造作的な工夫ができるのは、インドアならではの楽しさでもありますよね )
またコンテンツプランニングの面からみても、導きたい動作という切り口から考える事で、普段と違ったアイデアが生まれてくる事もあるので、オススメです。
子どもたちにとってデジタル・アナログに関わらず、身体をめいっぱい動かして遊ぶというのはとても楽しい体験です。テクノロジーの発展・普及によって遊びの進化の可能性も無限大に拡がっている中で、スクリーンの中だけでなく、身体性をしっかり発揮できる新しい遊びも、たくさん増えて行くと良いなと思います。
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