エレクトロニカ再入門
電子音響レーベル「Mille Plateaux」の創始者・Achim Szepanskiが亡くなったとのこと。
この話をしたら、「ああ、昔エレクトロニカってありましたね」的なニュアンスで言われ、この辺ってしばらく聴かれてなかった気がするなーでも最近中古は高くなってるんだよなーという気分もあり、再評価はそのうち来るだろと思ってるので少し解説。たしかに今から辿ろうとするとよくわからんジャンルかもしれない。
ここで言っている「エレクトロニカ」は狭義のほう、クリック、グリッチ、カットアップを使ったIDM、及びビートではなくサウンドのテクスチャでポップを表現するポスト・テクノ/電子アンビエント、などを指します。
なお、ジャンル名の変遷に関しては以前書いたのでそちらを参照。2000年代に入るまでエレクトロニカとは呼ばれていなかった、という話が書いてあります。
アンビエント・ハウス
これは軽く触れるだけですが、エレクトロニカを「ダンスミュージックではないテクノ」と考えた場合、そうした存在はアンビエント・ハウスが最初期の事例として挙げられます。高揚した人々を落ち着かせるための音楽であり、メインフロアではなくサブフロアで流れるダウンテンポなハウス(4つ打ちが入るという程度の意味)です。1989年~1992年頃が全盛。
代表作はThe KLF『Chill Out』(1990-02、KLF Communications)や、The Orbの1stシングル『A Huge Ever Growing Pulsating Brain That Rules from the Centre of the Ultraworld』(1989-10-21、WAU! Mr. Modo)と1stアルバム『The Orb's Adventures Beyond The Ultraworld』(1991-04-02、Big Life)です。電子楽器を使ってビートを強調しないで音楽を作ろうとすると、まだアンビエントくらいしかすることがなかった、のかもしれません。
インテリジェント・ダンス・ミュージック
エレクトロニカに直接つながるのは、「IDM(インテリジェント・ダンス・ミュージック)」と呼ばれるジャンルです。ハウスにしろテクノにしろ、ダンス・ミュージックが何よりもダンスフロアで人を踊らせるためにあるのはわかると思いますが、ダンスフロアで人を踊らせるためではない、むしろ家で聴くほうが合ってるようなテクノ発祥の電子音楽というのが登場したのです。象徴がWarp Recordsから1992-07-06に出た『Artificial Intelligence』。
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2001年以降に雑誌等に書いた記事を全部ここで読めるようにする予定です(インタビューは相手の許可が必要なので後回し)。テキストを発掘次第追…
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