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レビュー:手塚治虫『ばるぼら』(2005年ウェブ)
手塚は生涯に三回「ファウスト」を描いている。一度目は戦後すぐに(一九五〇年)、二度目は『百物語』(一九七一年)として、三度目の『ネオ・ファウスト』(一九八八年)は第二部が始まった途端に絶筆となった。手塚の表のライフワークが「火の鳥」だとはよく言われることだが、裏のライフワークは「ファウスト」なのだ。ゲーテの原作のモチーフである「悪魔メフィストと契約して若さを手に入れた代わりに、満足したと口に出したら魂を受け渡す」という部分に手塚は惹かれていたとみえる。原作は最後、地獄に堕ちる寸前で天使に助けられる。手塚も一作目はそれに従ったが、二作目は悪魔自身に救わせた。『ネオ・ファウスト』は一体どんな結末になっていただろうか。傑作の予感を感じさせるだけに手塚の死は早すぎたと思う。『ばるぼら』は作家・美倉がフーテン娘ばるぼらを駅で拾ったところから始まる。ばるぼらを追い出してもなぜかまた暮らしてしまう。彼女がいると筆のノリがいい。そうしてる間に、ばるぼら無しには作品を作れなくなる。ばるぼらの正体は悪魔で、美倉は生涯の代わりに芸術作品を手に入れることになった。人は死んでも芸術は残る。そう、これは手塚が生涯に渡って書き続けた「ファウスト」のモチーフを、オカルティズムを取り入れながら自作に昇華させた狂気の作品なのだ。なんのことはない、既に手塚は自らの「ファウスト」を完成させていたのである。一九七三年作品。
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