漫画レビュー: 高野雀『さよならガールフレンド』(2015年2月『Quick Japan』118号)
自分の斜め後ろから覗いてる監視カメラで自分ごと見えているみたいに客観視してしまう。このマンガはそんな人たちの物語であり、つまりそんなあなたの物語でもある。
日本最大の自主制作漫画誌即売会「コミティア」に二〇〇九年から参加、地道に人気を獲得していったマンガ家・高野雀は、二〇一四年に『フィールヤング』で商業誌デビュー。そこで発表したいくつかの短編と、コミティア読書会投票で第一位を獲得した表題作を含む、満を持しての初単行本が本書だ。
舞台は地方から都市まで、年齢層は学生からOLまで。主人公たちの会話劇を中心に展開する六つの作品たち。恋愛のドキドキやお手軽な爽快感はなく、あるのは焦りや行き詰まり。これから自分はどうすればいいんだろうと悩みながら、彼女たちはどこか自分にさめている。でもさめてるのと諦めてるのは少し違って、さめてるほうは諦めてはいないんだ。本書によく登場する空を眺めるシーンは、うつむきがちな彼女たちが自分以外へとカメラを向けられた解放感と重なり、だからこそ感動的だ。
マンガ的記号表現(漫符)を極力使わずに、劇的な瞬間をなるべく描かずに、強さのようなものをいつのまにか読者の心に忍ばせる。こんなに会話は重ねられているのに、大切なことは言葉で示されない。このマンガはそういうマンガだ。「マンガ読み」だけに読ませるのはもったいない。
<!--以下2020年コメント-->
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