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発達障害グレーゾーン中学生のテスト奮闘記④

この記事は前回の記事の続きです。

この記事のシリーズの最初の記事はこちらです。


今回の中間テストは5教科で、
本人の希望により
一番苦手な英語に
最も時間を割きながら勉強は進んだ。


本人の中では数学が一番難しいという感覚のようだが
これまでの試験結果では意外にも
数学が一番得点が高い。


嫌だと言いながらも
計算問題だけは年齢相応の問題を
日々コツコツ取り組んで来たためだ。


数学のテストは一定割合、
計算問題が必ず出るので
いつもそこで得点を稼いでいた。


(英語より数学をやった方が、点数は上がるけどなー)
と、毎日わたしは思ってはいた。

別にわたしは、点数を上げたい訳ではないのだ。


そうではないのだが、
本人的にこれだけやっても全教科
やる前と大して変わらない結果だった時に


やっぱりダメだ。
やっても無駄だ。
やっぱり自分はポンコツなんだ(←すぐこれを言う。。。)
となってしまわないか心配だったのだ。


日頃勉強をしておらず
基礎ができていない中で
試験前の2週間だけ勉強して
点数を爆上がりさせられるような
器用さも能力もないのだ。


それは障害の有無に関わらず
よほど地頭の良い子でない限り
ある程度
誰だってそうなのだが
彼はその事実をうまく受け入れられない。


自分の障害特性の部分と
誰だってそうだよ?の部分を混同し
いちいち過剰に反応したり
癇癪を起こしては途中で投げ出してしまう。


だけど本人がそこを混同するのは
ある程度仕方のないことだとも思う。


彼の障害特性上の
他の子との違いは
質の差ではなく
程度の差であることが多いから。


だがその混同と癇癪のために本人は
根気よくプロセスを進むと言うことを
なかなか学べないで来た。


何事も結果が出るにはある程度、
(能力の高低に関わらず)
時間がかかるということを受け入れられない。


だけど初めて自分の意思でがんばっている今回は
やってよかった!
これからもがんばって行こう!
と彼が思えるだけの
多少の結果はほしかった。

だけど残念ながら、英語ではそれは望めそうにない。


しょうがない。


その時の彼の落胆や荒れっぷりも
受け止める覚悟でやるしかない。


そう思っていた横で
英語のワークに取り組んでいた彼が


「あーもうどうして出来ないの!」
「やっぱりボクはポンコツなんだ!!」

と机に突っ伏す。


それは、ワークを開いてから一問ごとに繰り返された。


この「ポンコツ」は、
わたしたち親にとってはある意味キラーワードで
この言葉が出るとハードルを下げたり
慰めたり、抱きしめたりしてきた。

わたし達の中にも
本人には無理なことをやっているのだろうか?という
迷いや揺れがいつもあったからだろう。


だけど今回、一問ごとに
それを言っては泣き声をあげることが
何十回も繰り返された後
わたしは言った。


「うるさい。それ言うとなんかいいことあるの?」


彼はギョッとした顔をして起き上がり、わたしの顔を見た。


「ポンコツだったらどうなの? ポンコツだったらやらないの? いちいち自分をそんな風に貶めて、それの何がいいの? 何か生み出すの?」


彼はまだ呆然とわたしを見ている。
そう切り返されたのは初めてなのだ。


「覚えたての単語を、実際の問題でうまく使えない。そんなの誰だってあるよ。
そうしたら、あーこうやって使うんだな、もう一回。
あーこれは覚えてなかったんだなー、もう一回。
あー忘れちゃったなー、もう一回。
そうやって覚え直す。

それだけよ?

あんたが天才だと思ってるAくんは、
1日10時間勉強しているんでしょう?」


彼は、うん、と頷く。


「それでも、満点を取ってはいないんでしょう?」


彼はそこでハッとした顔をした。それから頷いた。

「そんなものなの。みんな、初めてのことに取り組んでいるのだから。
 意味ないの。
 ポンコツだとか天才だとか、そんな意味付けいらないの。

 10回で覚えるのか、100回で覚えるのか、
 1時間かかるのか、10時間かかるのか、人それぞれ。

 人が何回で覚えようが、自分に関係ないし、
 自分の場合は新しいことを覚えるのに、
 大体何回くらいかかるのかを段々知っていく、
 やりながら自分を知っていく、
 その自分と付き合っていく、それだけよ?

 やってもやらなくてもどっちでもいいよ。

 英語ができなくたって生きて行ける。
 英語ができなくたってポンコツじゃない。
 やるかやらないか自分で決めるだけ。

 どうするの?
 やるの?やらないの?」


「や、やる!!」


彼はそれ以上、不貞腐れたり癇癪を起こしたりしなかった。

今回は、本気のようだった。


<続きます。>

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