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舞依とレイコの空手チョップ……第3話

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■第3話

そうだ、そうだった!ワシはついさっきまで病院にいたはずではないか!

ヤクザに刃物で腹部を刺され、手術を受けてから1週間。鍛え抜いた体は医師も驚くほど回復が早く、退院もそれほど先ではないはずだったが……患部に激痛がぶり返したのは今朝のこと。緊急の再手術がおこなわることとなり、ストレッチャーに乗せられ手術室に運ばれた。

そのあとの記憶は……ところてん……そうだ、ところてんのように、肉体から魂が押し出されるような奇妙な感覚で意識を取り戻したのだった。ワシは手術が終わり意識が戻ったつもりだったが、目を開いても何も見えない。真っ暗闇。だが暗闇の中で天を見上げると、遠くにポツンと小さな光が見えており、あそこまでいくべきなんだなと、ふと、そんな気がした。

暗闇をよじ登るつもりだったが、なぜかフワフワと宙を舞うように到達できた。光は、暗闇の出口だった。暗闇から抜け出すと、見覚えるのある光景が眼下に広がっている。ワシが寝ていた病室。それを天井の角から見降ろしているようなのだ。病室のベッドには誰かが横たわっていた。よく知った顔……あれは、ワシ?どうしてワシが?しかも何かがおかしい。どこにも精気が感じられず、魂の抜け殻といった印象なのだ。夢でも見ているのだろうか?そう思った矢先だった。

天に吸い上げんばかりの強烈な吸引力が、いきなりワシの全身を包みこんできた。これに吸われてはいかん!そう直感し、激しく暴れて抵抗した。それでも吸引力はとんでもなく強い。すると、抗ったことで力の向きにぶれが生じたのか、バチン!と何かが破裂したような音が強烈な圧とともに襲いかかってきて、ワシはどこか遠くへ弾き飛ばされたようだった。

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