ぶーちゃんと野菜。農家の常識は他の人には非常識?を考えるnote
実家が農家だと言うと、土地持ちの資産家ではないかと思われることがありますが、全くそんなことはありません。
確かに、実家の周辺でも多少の開発が進み、その恩恵を受けて裕福な資産家となった家庭もあったでしょう。しかし、2号の実家は、父が80歳を迎えた今でも、野菜を生産してなんとか生活費を捻出しているような小規模農家です。
非農業従事者の方々にとっては、これは少し意外に映るかもしれませんね。
せっかくなので、農家と一般の人との間にある常識の違いについて、感じたことをお話しします。
養豚農家さんと2号
スーパーで国産豚として並んでいるのを良く目にする『三元豚(さんげんとん)』って、なんか特別な感じがしますよね。
しかし2号は、子供の頃から結婚するまで、ずっと聞いた事のない単語でした。
大ヨーク、中ヨーク、バークシャー、デュロック、梅山豚(めいしゃいんとん)、イベリア(イベリコ豚)なら、品種として聞いた事があるし、殆ど見た事もありました。
そして、産地などの名を冠した豚(鹿児島の黒豚等)や飼育環境・方法により区別されるSPF豚も知っています。
じゃあ、三元豚って何なのさ?
そう思っていたある休日に実家でじーじに聞いたのです。
で、返って来たのは思ってもみない答えでした。
『あぁな。ただの国産豚だな。』
じーじによると、日本で飼育される豚のほとんどは、3種の豚を掛け合わせて生産されるらしい。
3種が交配されているから三元豚。
販売業者さんはお上手です。
小規模野菜農家って難しい
じーじが体力的に衰えてきた事で、養豚を廃業し、野菜農家に転身した二人。
以前から米や自家消費用の野菜は生産していましたし、時々農協の直売所にも出荷していましたが、70歳を超え大きな軌道修正を迎えたのでした。
主要品目は、ブロッコリーとネギ、トウモロコシ。そして、その他にも季節ごとに少量の野菜を作って出荷しています。
毎週実家に行く2号も、普段は会社勤めの為、野菜に関して知らない事が沢山あります。
やっぱり出荷は気をつかう
スーパーで見かけるブロッコリーやカリフラワーで出荷されるのは中心の頂花蕾(ちょうからい)と言われる部分のみ。
実家でいえば、脇芽と呼ばれる中心からズレて出て来た部分は、一切販売されず収穫もされません。
そして、農協に出荷するには、その先の青果市場や買い付け業者の指定で、出荷時の姿まで注文が入ります。
例えば、頂花蕾を包むように伸びている枝のような茎は、その数や長さの指定が出荷先により異なったりする訳です。
・・・面倒臭すぎです。
野菜は名前が多すぎる
一般的な野菜の名前は、人間で言えば苗字のような物。多すぎるのは、氏名の『名』。
おはよう、こにちは、こんばんは、グランドーム、グリーンドームはブロッコリー。
ピッコラルージュ、イエローミミ、プチぷよ、千果(ちか)、アイコはミニトマトの品種名の一部です。
ゴールデンウィーク明けから6月にかけて実家の主力であるトウモロコシも当然のように種類が沢山。
どの野菜もシーズンになると苗字でなく、名前で呼ばれることが殆どで、どの名前が、何の野菜か理解するには慣れが必要なのです。
規格外の野菜に対して思う事
これは、農家さんの考え方や規模によって結構違うのかなって思います。
数年前、じーじとばあばの畑に雹が降って、その年のトウモロコシが全滅した事がありました。
約半年間収入ゼロが確定です。
それでも、近所の人に「食べられる物があるなら譲ってほしい」と言われ、じーじとばあばが対応していました。
歩くのも大変な畑に入り、少しでも綺麗なトウモロコシを探して集め、一つずつ皮をむいて中身を確かめ、タオルで汚れを落としながら、4時間以上かけて用意したのは30本のトウモロコシ。
合計1,500円で販売していました。
「ただでやったら、相手が『悪いことしたな』って思うだろうから」という理由でつけた値段だそうです。
・・・ね。規格外だから安くて当たり前とは思えなくなりませんか?
それに、安く買った野菜だって、不味かったり、虫がついていたりしたら、ほとんどの場合で満足度は低下します。結果として、正規品の売り上げにも影響が出るわけです。
「規格外でも味は正規品と一緒」というのは、全ての野菜や全ての生産者さんに共通するというわけではありません。
それを理解した上で、売ったり、買ったりしてほしいなと思います。
生産者ならではの贅沢
農家さんは、食べ物を大切にしているイメージがありませんか?
確かにその通りですが、それは主に出荷用の野菜や、他の農家さんからいただいたものに対してだけかもしれません。。
出荷シーズンになると規格外の野菜が毎日のように発生します。
また、『自宅で消費するために少しだけ育てた』野菜も、実は食べきれずに余ることが多いのです。
結果として、これらの野菜は扱いがめっちゃ雑になります。
それはもう、食べ物を大切にというイメージから、はかけ離れてると言わざるを得ないのです。
実際、我が家のじーじは『おいしい部分だけ食べて、残りは捨てて良いから』と孫たちにスイカやイチゴを渡すので、食育の観点からはまさに敵のような存在となります(笑)。
そして、きっと今日も日本中の多くの農家で、同じように顰蹙(ひんしゅく)を買っているじーじがいるのだろうと感じる2号です。
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