「ダイレクト物流」を展開 静岡・山岸運送グループ
多重下請け構造からの脱却図る
山岸運送グループ(山岸一弥社長、静岡県島田市、280台)は現在、「ダイレクト物流」を積極的に推し進めている。ダイレクト物流は、実運送会社が受けた荷物は自社(グループ内)、もしくは一次傭車までで配送を完結させるもので、多重下請け構造を取らずに納品させる取り組みだ。
ダイレクト物流は、2021年に山岸龍大常務(30歳)が命名した。もともと山岸常務は物流コンサル会社に4年在籍していたが、コンサル時代は、車両10台の小規模な会社から2000台の大規模な会社を訪問していた。
この時に運送業界では多重下請け構造がはびこっており、元の運賃がいくつもの事業者が介在することで、正常な業界運営がなされていないことを強く実感したという。
2019年に山岸運送の跡取りとして戻ってきてから、多重下請け構造のない物流事業の展開を目指し、その仕組みを構築してきた。現在、受けた荷物の95%は「ダイレクト物流」を達成している。
山岸常務はダイレクト物流について次のように説明する。
「ダイレクト物流を実現させることで、品質の高い物流を荷主に提供できる。トラブル発生時の報告は、多重下請構造になっていないので、荷主と自社もしくは協力会社とのやり取りで済み、スピーディかつ正確な情報伝達が可能となる。
多重下請けでは配送業者が荷主の担当者の顔さえ知らず責任感が薄くなりがちだが、信頼する実運送会社と共に把握できる範囲で業務を行い、トラブル対応も責任を持って行うことができる。
さらに、荷主が全ての中間業者の値上げ分を負担することがなく、無駄なコストが生じない効率的な運送ができる」
同社は10年前までは、メーカー物流に特化していたが、その後、事業譲渡をきっかけにスーパーやドラッグストアの配送を始め、ビール1本単位からのピッキングができるなど小売り向けの物流にも対応できるのを強みとしている。
物流センター運営、共同配送、チャーター便をこなして業績を伸ばし、年商は85億円。売り上げ比率は運送業6割、倉庫業4割で、現在、580名の従業員を抱える。
山岸常務は、「大手が元請けとなって、準大手がその下につき、5次、6次の多層構造が運送業界では存在する。『山岸は丸投げはしません』を売りにしており、
ダイレクト物流が強みとなって営業できている。
ダイレクト物流に対する、お客さんの反応は良く、特に足回りを持っていない物流子会社からの引き合いが多い。宅急便はヤマト運輸、というように多重下請けがない物流を『ダイレクト物流』として普及させていきたい」と話している。【1月1日号】
【写真】無駄なコストが生じない効率的な運送を目指す