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「情熱の焼き鳥とビール」
店じたいは変わっていないが看板や壁はきれいになっていた。
あの頃のすべてにおいて全力投球だった情熱や執着。今の私にはそんな無謀なことをするパワーもフォースもない。
20年以上振りにここへ来た。一人で入るのは初めてだ。店内に入ると平日のためか空いていた。
焼き鳥を焼くお兄さんは以前いたお兄さんとは違う人。
「遅れてごめんね」と背後から聞き覚えのある声。
振り返ると若い私が立っていた。
若い私は私の隣に座った。
そして私と同じビールと焼き鳥を頼んだ。
私たちは近況報告や他愛もない話をして、飲んで食べて、少し多めに私が支払って店を出た。
店の人は私と彼女を見て同一人物だと気づいただろうか。
帰り際に彼女は、
「思ったより老けてなくてよかった」と言ってキックボードに乗ってアパートの方へ帰って行った。
私はこの週末にキックボードを買いに行こうと思った。
The End.
2024.11飛騨高山
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