花も空の夢を見る

ストーリーテラー。 旅へ出たり、映像を作ったり、写真を撮ったり、音楽を作ったり、ショートストーリーを書いたり。 フリーランス映像クリエターと介護ヘルパーと二足の草鞋を履く。地域福祉ファシリテーターとして活動中。

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ストーリーテラー。 旅へ出たり、映像を作ったり、写真を撮ったり、音楽を作ったり、ショートストーリーを書いたり。 フリーランス映像クリエターと介護ヘルパーと二足の草鞋を履く。地域福祉ファシリテーターとして活動中。

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最近の記事

映画「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」今回のオスカーにノミネートされていないのが残念。素晴らしい作品なのに。

2017年、ハリウッド業界を震撼させた性的暴行事件。 数多くのヒット映画のプロデューサー、ハーヴェイ・ワイスタインによる性的暴行について大きく報道されました。 被害者は彼の元で働いていた女性たちや、彼の手がけた作品に出演している俳優たちで、長年に渡って性的暴行を起こしていました。 さらに口外しないよう巧みな裏工作まで行ってきたことが明らかに。 これをすっぱ抜いたのは、ニューヨークタイムズ誌。 映画は、この事件を追う2人の女性ジャーナリストと編集部チームが、どのようにして事件の

    • 映画「対峙」“すごい映画を見てしまった”

      映画の舞台は町の教会。 そこでは近所の子供がピアノレッスンをしていたり、讃美歌の練習が行われていたり、近所の人たちが集うであろう、そんな庶民的雰囲気の教会。 教会フタッフも、親しみやすく庶民的。 そこへ、本日この教会の貸し出しスペースを予約した女性がやってくる。 スーツ姿でビジネスライクなその女性、到着して早々、部屋を細かくチェックする。 教会にはピリっとした緊張感が漂う。 ここで一体何が起こるのか?私たち観客はしばらくは分からないまま映画は進む。 そこにやってきたのは2組の

      • 終のすみかの乙女たち「席替え」

        「西さんの隣がいい!」 白川さんは職員の木村さんにうるうるした目で訴える。 「白川さん、運が良ければね。今月は隣になれるといいですね」 「西さんの隣がいいの!だからくじは引きたくない!」 ここでは月末になると、食堂の席をくじ引きで決める“席替えくじ引き大会”が開催される。 テーブルは4人席。 気の合う人と同じ席になった人はラッキーだけど、 中には気の合わない人同士が同じ席になることもある。 「くじを引かないと、西さんの隣にはなれないですよ。 くじを引かない人

        • 終のすみかの乙女たち「買い物リスト」

          「ユニクロじゃだめですか?」 何度この会話をしただろうか。 せめて下着くらいユニクロにしてくれたら。 ヨーカドーもユニクロも変わらないと思うのだが。ヨーカドーは遠い。 しかも今日は三連休の最初の日。店も混んでいるであろう。 よりによって昨日から腰の調子が悪い。 恵介は食器を洗いながらため息をつく。 義母は施設に入る前まで長いこと成城に住んでいた。 義父が亡くなってからもしばらく一人で暮らしていた。 80歳を過ぎても、月に一度は行きつけの美容室へ行き、おしゃれを楽しみ、娘の明

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        • 終のすみかの乙女たち
          10本
        • ショートストーリー/short short
          1本

        記事

          終のすみかの乙女たち「ひと工夫」

          「3/3ひな祭りランチのお知らせ」 3/3ひな祭りのランチはスペシャルコースメニューです。 ご希望される方は、ここに○を付けて下さい。 追加料金500円頂きます。 メニュー ・ちらし寿司 ・小鉢 ・赤だしのだいこん味噌汁 ・カップケーキ ある日の夕食後、お知らせが配られた。 「いま記入できる方はここで集めますー」 職員が各テーブルを回っている。 「もうそんな時期なのね」「楽しみね」と、 お知らせに○を付けている乙女たちがいる一方、 半数以上の乙女た

          終のすみかの乙女たち「ひと工夫」

          終のすみかの乙女たち「ロックT」

          最近、花井さんの機嫌がすこぶる悪い。 何に対しても、「嫌だ、いや、イヤ!」の一点張り。 「さあ、花井さん、トイレに行きましょう」「イヤだ!」 「そろそろお風呂の時間ですよ」「風呂なんて入りたくないよ!」 それでも職員はどうにかこうにか工夫をこらして促す。 ひとり歩行ができない花井さんは、常に職員が介助をして歩行しなくてはいけない。 その度に「イヤだ!痛い痛い!殺される!」と、大騒ぎ。 「これって、ハラスメントになっちゃうんですかね?」 いつもの通り拒否する花井

          終のすみかの乙女たち「ロックT」

          終のすみかの乙女たち「法事とマダム」

          「マダムには絶対二ヶ月おきに行くんだから!」 ここに入所して一番の困りごとは、地元にある行きつけの美容室「マダム」に行けなくなってしまったことだ。 「マダム」へ通い続けて20年以上。 知子の担当は店長の大野くん。 新人の頃から知っていて、彼の成長を見守って来た息子のような存在。 何も言わなくても、いつも同じスタイリングに仕上げてくれた。 幼少の頃から、髪をよく褒められた。黒いストレートヘア。 歳を重ねても若々しかった。 しかし、脳梗塞で倒れ、生死を彷徨い、あっ

          終のすみかの乙女たち「法事とマダム」

          雪の九頭龍(Culture)

          11月下旬、長野県戸隠にある戸隠神社奥社へ。 戸隠神社奥社までは長野市内からバスで1時間ほど。 「今年初めての積雪があったんですよ」 昨日、観光案内所の方が言っていた。 山へ行くにしたがって白い景色が広がりを見せる。 はりきって出かけたが、予想を上回る白い景色に不安へ変わって行った。 想定外の展開のため軽装備。雪道に慣れていない私は凍った雪の上を慎重に歩く。 こんな牛歩では目的地の九頭龍社までどのくらいかかるのか。通常、九頭龍社までは片道40分と言われている。

          雪の九頭龍(Culture)

          終のすみかの乙女たち「バス・ミッション・インポッシブル」

          一人でお風呂に入れない、または一人では不安だと判断された乙女たちは、 ヘルパーから介助してもらいお風呂に入る。 これがまた、芋洗作業のようなのである。 体調を考慮して午前中に入浴を済ませてなければならず、おまけに施設のお風呂場は2つしかない。 一人につき、20分が目安。毎日20人以上が風呂に入るのだから仕方がない。 髪の毛を洗い、体を洗い、湯につかる。 着替えなど入れて20分はあっという間だ。 湯に浸かっている時間は正味3分と言ったところだろうか。 されるがままの乙女、頑なに

          終のすみかの乙女たち「バス・ミッション・インポッシブル」

          「710年そばの旅(役小角の蕎麦・完結篇?)」(Culture)

          10月下旬、再び奈良時代伝説のそば、入野谷在来種のそばを求めて伊那へ向かった。 目指すは前回の旅で教えてもらった「壱刻」。 伊那バスターミナルから市バスに乗り換えるため、バスターミナルで30分ほどバスを待つ。 バスに乗り、山道を走ること25分、高遠駅に到着。 高遠駅を降りてすぐ「壱刻」を発見。 店内はおしゃれなウッド系でモダン。ジャズが流れている。 早速、高遠そばを注文。もちろんそばは入野谷在来種のそば。 そばを待つ間、お店のお母さんが優しく声を掛けてくださる。 しばら

          「710年そばの旅(役小角の蕎麦・完結篇?)」(Culture)

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          soba trip(vlog)

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          終のすみかの乙女たち「洗礼」

          太一はおばちゃん子だった。 おばあちゃんは3年前年亡くなった。 近所に住むおばあちゃんの家にはよく行っていた。 病気のため片腕を切断し不自由だったおばあちゃんのために、炊事洗濯、ちょっとした手伝いもしていた。 だから料理は結構得意だ。今は居酒屋のキッチンでバイトをしている。 農学部三年生の太一は、まだ進路を決めていない。 大学のサークルとバイトに終われる日々。 だがしかし、コロナの影響で大学はリモート。バイト先は営業短縮されシフトは削られた。 それでも生活費はかかるし(家賃は

          終のすみかの乙女たち「洗礼」

          役小角の蕎麦(未完)(Culture)

          スーパーサイア人?超人? 謎多き山岳宗教の開祖、役小角。日本最古の呪術者。 彼が修行のため信濃の山岳へ入った際に村人たちにもてなされ、 そのお礼に、いつも持参していたそばの実を渡したそうです。 それがまぼろしの「入野谷在来種」。 それを大事に育て、十年掛で復活。 それが実り、幻のそばの実から作った「入野谷そば」が伊那市内の蕎麦屋に出回ることとなりました。 日本最古の呪術者が持参していたそばの実。 持参していたと言うことは、修行中、道中、口にしていたに違いない。 と言うことは

          役小角の蕎麦(未完)(Culture)

          安野光雅展(Culture)

          横浜高島屋の安野光雅「洛中洛外と京都御苑の花」展へ。 安野光雅さんは、絵本を中心に活躍された画家。 誰もが一度目にしたことがあるであろう「旅の絵本」とか「ふしぎなえ」とか。 きっと見たら「ああー見たことある」となる、やさしい水彩画が印象的。 昨年2020年12月24日に亡くなった。 京都の市街郊外や草花の、安野さんの絵とエッセイが並んで展示してある。 四季折々の京都。今すぐにでも京都に行きたくなった。 絵ももちろん素敵だけど、エッセイも素敵。 会場で上映している、安野さんの

          安野光雅展(Culture)

          終のすみかの乙女たち 「脳トレ」

          「はい、どうぞ。脳トレでーす」と、職員が利用者にプリントと鉛筆を配る。 利用者は午前中のお昼までの時間、食堂で自由に過ごす。 テレビを見ている人、新聞を読んでる人、編み物をしている人などさまざま。 暇を持て余している人には、脳トレのプリントが配られる。 ここで配られる脳トレプリントは同じものが配られる。要介護度によって特に分けたりはしていない。文字が大きくこんな感じ。 みんな素直に配られたプリントを受け取り取り組んでいる。 プリントを受け取ったユリ。 「いつもこんな幼稚なの

          終のすみかの乙女たち 「脳トレ」