![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/163478999/rectangle_large_type_2_690986af10a253187e6472b831074a50.jpeg?width=1200)
「それでも朝は来るしモーニングセットにゆでたまご」
朝7時半。
オープンとともに店内はあっという間に満席になる。
カウンター席には常連客が並ぶ。
みんな一斉にモーニングを注文するから店内はてんやわんや。
カウンターでは店主がひとりきりもり。
コーヒーを淹れてパンを焼いて卵も茹でる。
モーニングメニューはコーヒーとトーストまたはロールパン、オレンジジュース、ゆでたまごで800円。
運ぶのは店主の妻と娘。
日曜朝の風景。
私は迷っていた。
9時に迎えが来るから時間はある。
なにもこんな日にわざわざモーニングを食べに出かけなくていいじゃないかと
息子に言われそうだ。
しかし落ちつ書かない。
大抵は一人で新聞を持って出掛けていたがごくたまに妻と来た。
妻はロールパン派で私はトースト派。
そうだ今日はロールパンにしてみよう。
相変わらず店は混雑していた。
太った外国人の隣しか空いていない。
「モーニングセット、ロールパン」
注文を取りに来た娘は「はい」とそっけない返事をして去って行った。
今日は新聞を持ってくるのを忘れた。
店内を見渡すとやっぱりいつもの日曜日だ。
ほどよい苦味のあるここのコーヒーが好きだ。
コーヒーを飲んでいる間に娘がロールパンの入ったバケットを運ぶ。
ゆでたまごが2つ。
ひとつ多いとカウンターでコーヒーを淹れている店主に合図を送る。
店主は手を止め胸に手を当てて私に向かって頭を下げた。
ふとカウンターの鏡に映る自分を見ると私は喪服を着ていることに気がついた。
The end.
2024.11飛騨高山 Coffee Don
#shortstory #cafe #coffee #travel#旅と物語#飛騨高山
![](https://assets.st-note.com/img/1732746440-8lnVLReIWj0gHZ7Byr3czP5x.jpg?width=1200)