見出し画像

「それでも朝は来るしモーニングセットにゆでたまご」

朝7時半。
オープンとともに店内はあっという間に満席になる。
カウンター席には常連客が並ぶ。
みんな一斉にモーニングを注文するから店内はてんやわんや。
カウンターでは店主がひとりきりもり。
コーヒーを淹れてパンを焼いて卵も茹でる。
モーニングメニューはコーヒーとトーストまたはロールパン、オレンジジュース、ゆでたまごで800円。
運ぶのは店主の妻と娘。
日曜朝の風景。
私は迷っていた。
9時に迎えが来るから時間はある。
なにもこんな日にわざわざモーニングを食べに出かけなくていいじゃないかと
息子に言われそうだ。
しかし落ちつ書かない。
大抵は一人で新聞を持って出掛けていたがごくたまに妻と来た。
妻はロールパン派で私はトースト派。
そうだ今日はロールパンにしてみよう。
相変わらず店は混雑していた。
太った外国人の隣しか空いていない。
「モーニングセット、ロールパン」
注文を取りに来た娘は「はい」とそっけない返事をして去って行った。
今日は新聞を持ってくるのを忘れた。
店内を見渡すとやっぱりいつもの日曜日だ。
ほどよい苦味のあるここのコーヒーが好きだ。
コーヒーを飲んでいる間に娘がロールパンの入ったバケットを運ぶ。
ゆでたまごが2つ。
ひとつ多いとカウンターでコーヒーを淹れている店主に合図を送る。
店主は手を止め胸に手を当てて私に向かって頭を下げた。
ふとカウンターの鏡に映る自分を見ると私は喪服を着ていることに気がついた。
The end.

2024.11飛騨高山 Coffee Don

#shortstory #cafe #coffee #travel#旅と物語#飛騨高山


いいなと思ったら応援しよう!