さくら観音

 ある方のブログで写真を見て、是非お会いしたいと思い出かけました。

 信貴山(しぎさん)の麓、奈良県三郷町(さんごうちょう)にありました。

 お寺ではありませんので、カーナビにも無く、かなり迷い、何人かの方に尋ねて、ようやくたどり着きました。

 住宅街の道の端、大きなお宅の塀の前に、石で出来た祠があり、その祠の中で、樹のうろに包まれるようにして祀られていました。

 以前は、この様な石の祠ではなく、桜の木のうろの中に、直接お祀りされていたようです。

 10cm程のほんとに小さな愛らしい観音様です。かわいい両手を胸の前で合わせて、笑っておられます。観音様のおみ足はあまり見えません。

 こんなあどけない観音様を一体誰が、いつ頃彫り、桜の木にお祀りしたのでしょう?

 恐らく、観音様を安置してから、樹が育ったのでしょう、うろの口が狹くなっていました。

 そしてその後、何らかの理由で桜の木が切られ、このような形で祀られることになったのだと思いました。


 お賽銭を入れ、お参りをしている時、道に面した近くの宅からラジオの音が聞こえていました。しばらくしてその宅から男の方が出て来られ、この観音様のお話をして下さいました。

 昔は、今、祠の隣りにある桜の樹から横に太い枝が伸びていて、その枝にあったうろに観音様が祀られていたそうです。

 枝が大きくなり過ぎて、車が通りにくくなったのでその枝を切ることになり、その時、観音様をうろごと切り取って、それを収める石の祠を作り、こうしてお祀りしているのだそうです。

 生憎、誰が、いつ頃作ったものかは分からないそうです。

 偶然でしたが、お話が聞けて、事情が分かりすっきりしました。

 祠は有っても、扉が無いので、強い雨や風は当然、観音様に吹きつけます。木で出来た仏様なので虫も付くと思います。

 帰り際、この先、このかわいい仏様はどうなってしまわれるのか、後ろ髪を引かれる思いがしました。

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 朝護孫子寺さんの前を通る県道236号線沿いに、今は廃線になったケーブル線の旧信貴山駅跡を利用した、奈良交通の「信貴山」のバス停があります。そこから信貴山東の住宅街へ通じる細い道がのびています。その道を西に進み、先程の県道236号線と交わる20メートル程手前に、さくら観音様の祠があります。