本山寺 雪の音
最近、高速道路ができたので、山の中腹にある駐車場まではすぐでした。でも、そこからが大変。急な坂道を1キロ程、歩いて登らなければなりませんでした。
本尊の毘沙門天様は秘仏でお会いできませんでしたが、奈良の国立博物館に寄託されているこのお寺の聖観音様には、先日、東京の博物館でお会いしていました。
御朱印をお願いすると、今まで見たことのない梵字の御朱印を、筆ではなく刷毛を使って書いて下さいました。
御住職にお話を伺っていると、突然雪が降ってきました。それも結構な密度で。駐車場までの山道に雪が積もったら、ノーマルタイヤの私は帰れません。
いとま乞いのご挨拶もそこそこに帰り道を急ぎました。行きには、少し登っては休憩した道を、今度は転げるように降りました。その間にも雪は小止みなく降り続いていました。
しばらく行くと、流石に疲れて歩を緩めました。服に付いた雪をはらいながら足を止めて空を見上げました。
目の悪い私には、灰色の空間から、突然、牡丹雪が目の前に現れ、私を避けて放射状に落ちていくように見えました。
そういえば、昔から雪が好きでした。大人になって初めてスキー場に行った時も、あまりの雪の多さに感動して、滑るのも忘れて雪の上で大の字になり、しばらく雪に埋もれていました。
またある時、リフトに乗りながら、紺色のヤッケに付いた粉雪を見ると、その一つ一つが、子どもの頃から見慣れた、あの六角形の結晶の形をしていて(当たり前なんですが)、何故か妙に納得したのを覚えています。
森のあちこちから音が聞こえていました。それは、枯葉や笹の葉に、雪が降りかかる微かな音でした。
カサカサ、ササササササ。
耳を澄ましても、雪の音の他には何の音も聞こえません。
サ.サ.サ.サ.サ.サ.ササーササー。サリサリサリ。
気がつくと、初めて聞く雪の音に囲まれていました。