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「絵の前に立つときの感覚は、小説を開くときに似ている。作家が何万もの言葉を費やして説くことを、絵画は一目で理解させる。一冊の本にも勝るとも劣らない思いが、一枚の絵に込められている。」とは作家、西條奈加さんが日経新聞の文化蘭に書いた文章である。(西條奈加|吉川英治文学新人賞、直木賞など) 絵画の中にその作家の生涯の思いが籠もっているのだ。作品という小さな粒に人生のすべてが描きこまれているのは絵画でなくとも、小説でも建築でも同じである。その人の思想は小さな一粒の作品に全部が