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Ⅰ型はそんなに辛いことか? 3章
低血糖への対策と
インスリン注射をする環境について。
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2016年 10月1日(土)
高校の研修旅行 行き先はイタリア。約10日間でローマ、ベネチア、フィレンチェ、サンジミニャーノ、パドゥバ、バチカンの美術館を巡る旅。
主治医の先生に「薬の機内持ち込みの証明書を英語で書かないといけないから早めに日程を教えて」と言われた。早過ぎても失くしてしまうので1週間前に手元に備えた。
アリタリア航空の飛行機に乗ってローマのフィウミチーノ空港(通称 レオナルド・ダ・ヴィンチ空港)を目指す。成田空港の入国審査管理場でパスポートと持ち込み証明書を出そうとしたが、審査官はパスポートをたった3秒で見て印を押した。証明書はどこにも出す機会がなかった。日本のパスポートは信用度が高いからだろうか。
インスリン注射はトイレでしていたので客室乗務員にも同級生にも気づかれることもなく過ごした。
イタリアでもディズニーランドと同じく歩き続けた。1日に4つの美術館を回る日もあったので毎日脚が筋肉痛になった。イタリアはバールというパニーニを売っている軽食店や、ジェラート屋が多い。自由時間には積極的に食べに行っていたので低血糖にならずむしろ200あたりを彷徨う高血糖だった。軽食時はインスリンを一切打たないようにしていたからだ。高血糖でも観光はできるが、低血糖になって倒れたらイタリアで高額な医療費を払って入院していた可能性もある。
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2018年 5月10日(木)
大学の3・4限の映像論。毎回映画を観てヲノ先生が映画について解説する授業。『ドリーム』という映画を観た帰り、もう授業はないので大学から橋本駅へ長い坂を下って帰っていた。
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久保々谷戸というトンネルがある。そのトンネルの中で足がエア膝カックンになった。カクカクが止まらない。白い汚れた柵を掴みながら暗いトンネルを震えながら歩いた。
今すぐ何か食べよう。ファミマが近い。しかしあそこにはイートインコーナーがないから落ち着いて食べるところがない。そのまま真っ直ぐ歩いてローソンへ向かう。そのローソンにはイートインコーナーがあった。カクカクする足で力を入れ過ぎずにタッタッと歩いた。
ローソンでカロリーメイトを頬張った。このときしたツイートはこちら。
低血糖にも関わらず映画の感想を呟く。数式を理解できないのは低血糖のせいです。足カクカクしていた間もTwitterを見ていた。映像論は『#ぞーろんとつけて感想をツイートしてください。』と(ツイ廃のヲノ先生がおっしゃるので)学生はTwitterで感想を呟くのが恒例。他の学生の『ドリーム』の感想を見るのが止められなくなってしまった。
低血糖でもこのくらいなら大丈夫と考えてしまうと余計に辛くなる。低血糖になったら糖分のことだけ考えよう。
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2019年 2月21日(木)
病院のナースステーションには糖尿病患者が血糖測定とインスリン注射をするためのスペースがある。眼科検診の 一部が途切れた環のようなテーブルがある。看護師さんは途切れ目から環の中に入り、患者に 医者から指定された単位数をその都度言う。もちろん血糖値は看護師に全て報告する。
病院では1日血糖と呼ばれる日がある。院食は朝の8:00,昼の12:00,夕方の18:00に出る。その食事前3回と、各食後2時間後に計3回、そして寝る前の1回。1日で7回も測る日だ。
食後2時間後の血糖値は、HbA1cが8%を超える患者は2時間後がピークと言われている。健康な人だともっとピークは早い。食後2時間後は最も血糖値が高くなるタイミングということだ。
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人数の関係もあり、病院では男女で 血糖測定をする時間、注射する時間が分けられている。1度に6席しか座れないが患者は18人ぐらいいる。
7:20は男性の血糖測定
7:30は女性の血糖測定
7:45は男性のインスリン注射
7:50は女性のインスリン注射
家では血糖測定の後にすぐインスリン注射をする。面倒くさいが一人の看護師が一度に見守れる人数を考えた結果だ。
寝る前は血糖測定と注射を続けてする。このときは男女どちらも21:00にナースステーションへ。私がインスリン注射をしようとすると看護師が「男性がいなくなってからね。」と言う。
この言葉は男性は言われないだろう。どんなぽよぽよ腹の男性でも「女性がいなくなってからね。」とは言われない。こうして一目を気にする必要はあるのだろうか。
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2018年 7月22日(水)
楽観的な理系大学院生が提案した。
「一度このⅠ型糖尿病のみんなで旅行して、食べ歩きしながらインスリンを打つとかしませんか?僕、前にやったことあるんですけど意外と気付かれなくて。」
一目を気にしてトイレで打たなくてもいい。作業自体は一瞬で終わる。新米お母さんが授乳を公衆でできる自由を訴えるように私たちⅠ型糖尿病の患者も公衆の面前でインスリン注射をする権利があると気づいた。
4章へ続く
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