物書庵初心週記帖(44号)「出口戦略無き宣言延長に勝算はあるのだろうか」
春の訪れを告げる二十四節気の啓蟄を過ぎ、20℃近くまで最高気温が上がる日も増えてきた。いつもの川沿いに出向くと、無事に越冬を成し遂げた野鳥達が熱心に飛び交っている。小虫がブンブン飛んでいて目や口に入りそうになるのを咄嗟にシッシと追い払う。そういえば冬には全くいなかったなとふと気がつく。野鳥達もこの小虫を餌として追い求めて川沿いを飛び回っているのだろうか。小虫の登場も春の訪れを告げているのかもしれない。もう少しでツバメさんが滑空する姿が見られるのかなとワクワクしてくる。
いわゆる想定内ではあったが、一都三県に発令された緊急事態宣言は2週間の延長となった。短期的に成果が出しづらいかつ政府がコントロールしづらい感染者数ではなく病床使用率を解除の指標へとシフトするそうだ。日々、様々な容体の患者と向き合っている医療従事者からしたら溜まったものではないだろう。厚労省が把握出来ていない範囲で変異株も広がっているようだ。日々の感染者数も現在の経済活動を維持するのであればこれ以上の減少は見込めないだろう。3月末の花見や卒業式、送別会のイベントシーズンを見越しての延長とあるが、23日に解除出来なければ、1ヶ月後にはGWが控えている。もはや出口戦略を見失っているようにしか見えない。時短要請になんとか踏ん張って生き延びている飲食店を踏み絵のようにする構図になんとか終止符を打てないものだろうか。
数日前のWBSで感染症学専門の教授がゲスト出演した際、次のような趣旨のやり取り(逐語録でないのはご勘弁を)が行われた。「教授:緊急事態宣言の延長は当然。東京で100名の水準が維持できる見込みが立った時点での解除が妥当だ。」「キャスター:2週間の延長で100名水準の維持の実現は見込めるか?」「教授:それは無理だろう」「キャスター:100名水準に届くためには何が必要だと考えるか?」「教授:国民一人一人が中長期的な視点で感染者数を抑制する必要性を認識して意識と行動を変えていく事だ。」ここで時間オーバーになってしまったが「具体的にどのような働きかけをして国民意識と行動をどう変えていくのか?そもそも国民側に一方的な原因があるのか?」と疑問しか浮かばなかった。いかにも大学教授らしいコメントいえばそれまでだが…。
緊急事態宣言と言いながら実際に行っているのは飲食店の20時以降の営業時間短縮要請のみというのが実態の中、某都知事は「今が辛抱」「大きな危機感を持って」という主観的なメッセージのみで説得力が無く声が届かなくなるは当然だ。大きな危機発生当初はそのようなメッセージが有効なフェーズだが、いつまでも続けるのだろう。
「トラブルが発生した要因をピックアップして、インパクトを試算する。解決に向けた優先度を検討し、照準を絞り具体的なアクションを明示し実行する。
進捗状況や効果を定性、定量の両面から計測し、説明責任を果たしながら、次のアクションに移行する。」説明責任が果たされていないのか、はたまた実施していないのかはわからないが、一般企業における危機管理で当然のプロセスが踏まれていないように見えてしまう。
そして事あるごとに挙げられる「若者のゆるみが」への違和感。未来を担う若者に、このコロナ禍をどう過ごしてもらうかは大切な議論だと愚庵は考えている。次号ではこの点について考察をしていきたいと思う。